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基礎から臨床につなぐ薬剤耐性菌のハナシ(15)

[第15回]誰も教えてくれないザバクサ®の使いドコロ

西村 翔 にしむら しょう
神戸大学医学部附属病院感染症内科

(初出:J-IDEO Vol.3 No.4 2019年7月 刊行)

 前回CPEのスクリーニングに引き続いて今回はCPEの確認検査のハナシをする予定でした.しかしその前に,日本でもまもなく使用可能となるceftolozane/tazobactam(ザバクサ®)の先行きに不安を覚えたので,そのポジションについてまとめておきたいと思います.

┃ceftolozane-tazobactam(TOL/TAZ)の基本的特性

 この連載は耐性菌に関する連載ですから,TOL/TAZの薬剤特性全般にこと細かく触れると本筋から外れてしまいます.ですので,最初にビュレット形式でこの薬剤の基本的特徴を確認しておきます.
・TOL/TAZは,新しいoxyimino cephalosporinであるTOL 1 gと既知のTAZ 0.5 gの合剤です.
・抗菌活性の点で既存の抗菌薬と比較した場合のTOL/TAZの特徴は2点あります.1点目はTOLによる多剤耐性緑膿菌に対する活性であり,2点目はTAZを併用することによるESBL産生腸内細菌に対する活性です.
・第Ⅲ相試験では,複雑性尿路感染症ではlevofloxacin(LVFX)に対して【1】,複雑性腹腔内感染症ではmeropenem(MEPM)に対して【2】非劣性が示されています.これらの結果に基づいて,現時点では海外でも国内でも複雑性尿路感染症および複雑性腹腔内感染症のみに適応があります.
・現在,人工呼吸器関連肺炎あるいは挿管管理に至った院内肺炎に対する第Ⅲ相試験(NCT02070757)【3】が進行しており,肺内の組織移行性は血中の約半分であるというPK/PD理論【4】から,現在の推奨投与量の倍量(TOL 2 g/TAZ 1 g 8時間ごと投与)で,MEPM 1 g 8時間ごととの比較が行われています.
・代謝経路は腎排泄で,腎機能低下患者では用量を調節する必要があり[表1],第Ⅲ相試験ではCrClが30未満の患者は対象から外れています.したがって,これらの腎機能低下患者での推奨投与量には,十分な臨床的裏付けがあるわけではありません.

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