見出し画像

Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(14)

Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(14)
第13回 感染症コンサルタントメルマガ(キッシーマガジン):
実際どうする? セファゾリン供給不足問題への対応
岸田直樹 きしだ なおき
感染症コンサルタント
北海道科学大学薬学部客員教授


はじめに

 前回は感染症コンサルタントの介入Process 3として,介入をより効果的に行うために,感染症に対するさまざまな介入の“広がりとその難しさ”についてイノベーター理論をもとに解説しました.感染症チームからしたらとても理に適った効果のあるもの(介入・商品)と思ってやっていても,それを院内職員(市場)にやってもらうのは簡単ではないと感じていると思います.実際,勉強会をしたからといって,すぐに皆が良いと思ってやってくれるものではありません.誰もが正しいこと? を論理的に話したらやってくれるとつい思いがちですが,そんなことはありません.そんなにうまくはいかないとわかってはいても,その広がりの遅さだけではなく,いくら努力しても広がらない現状についイライラしてしまいます.前回は,ここをイノベーター理論から理解するといろいろ見えてくることがありご紹介しました.いま自分たちがやろうとしていることはどのフェーズでどこの層をターゲットにしているか? キャズムという大きな溝はどんな介入でも存在し,それをどのように越えるとよいか? うまくいかなくても決して安売りはせずにキャズムの先にいるニッチ層に手堅くアプローチし,チャンスを狙うこと.そして何よりこれまでも繰り返してきたように,無理な介入ではなく「小さな事故を大きく見せる!」アプローチによる院内感染スタッフによるひとつひとつの丁寧な対応こそがニッチ層の発掘とともにキャズムを越え,マジョリティーの安心・信頼の心を掴むきっかけになりうるのです.病院を真に変えうるのはコンサルタントではありません.やはり皆さん院内感染スタッフであることは間違いありません.
 これまで13回にわたり,3つのプロセスを意識して感染症コンサルタントの介入をご紹介してきました.この連載を執筆している間もコンサルトは続いていて,感染症コンサルタントのさまざまな関わりから見えてきているものがたくさんあります.これからは,体系的な情報ではありませんが,そんな感染症コンサルタントの日々の新しい挑戦・気づきをご紹介できればと思います.今回は,「感染症コンサルタントメルマガ(キッシーマガジン):セファゾリン供給不足問題への対応」を紹介します.


ホットな話題をご紹介!
「感染症コンサルタントメルマガ
(キッシーマガジン)」

 感染症コンサルタントとしての関わり方のニーズがこの仕事を始めた5年前(2014年)から徐々に変わってきているのを実感します.耐性菌を減らすために定期的に訪問し,その病院の現状をデータで出すことでまずはしっかりと現状を把握し,これまでご紹介した形で感染対策・臨床感染症の両方の側面で直接訪問しながら介入するという手法の大切さを感じておりそれを実践してきました.しかし近年,定期的な訪問ではなくてもメールや電話などでいつでも気軽に相談できるサポートをしてほしいというニーズが高まっています.感染症の情報を入手するのはいまは難しくはありません.しかし.その情報を実際にどう解釈し現場に活かすか? 特に,感染症専門医は実際のところどう考えているか? 直接訊いてみたい! というニーズです.これは医療に限らない話で,いまはたくさんの情報がさまざまな媒体から容易に入ってくる時代です.それに対してネット上などでもいろいろな人がいろいろなことを言っているのですが,実際のところどうなんだろう? の判断が難しいところです.また,その切り口に関しての疑問点はたくさん生まれますが専門家に気軽に訊ける環境にいる人は多くはありません.ネットなどから得られる情報は結局のところどれが正解かもわかりにくい,変化の激しい時代になりました.よって,気軽にディスカッションし,そこで生まれた質問にも直接答えてくれる,このような過程はとても大きいのではないかと感じます.
 そこで,コンサルタント契約をしている病院とはMLを利用し,感染症のホットな話題を「感染症コンサルタントメルマガ(キッシーマガジン)」として配信し,それをきっかけに質問などを気軽に受け付けています.


キッシーマガジン:
日医工セファゾリン供給停止情報

ここから先は

2,657字 / 3画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?