見出し画像

呼吸器感染症よもやま話(20)

[第20回]COVID-19 が“否定できない”問題

倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科

(初出:J-IDEO Vol.4 No.3 2020年5月 刊行)

一般市中病院にCOVID—19がやってきた!

 当院は,通常の呼吸器診療では診られなくなった重症例の患者さんが多数通院するという,ちょっと異質な病院ということもあって,COVID—19は非常に懸念材料でした.
 私は自施設のICTに所属しているのですが,大阪府内でライブハウスのクラスターが発生したこともあって,保健所からの依頼で受診した場合と,ゲリラ的に来院した場合の2パターンに分けてマニュアルを作成していました.当院は,結核病棟は有していますが,それ以外の感染症病棟はないため,SARS—CoV—2が陽性と判明すれば,指定病院へ転院させるという手はずになっていました.
 当院で一番問題になったのが“動線”です.このような指定感染症がやってくるという想定にないため,外来ベースでCOVID—19疑い患者さんをどう隔離するかに頭を悩ませました.
 この連載を読まれている皆さんは,COVID—19が初期症状だけでは診断が難しい疾患であることはご存じと思います.ただ,慢性呼吸器疾患の患者さんは,頻繁に咳や微熱を訴えることがあるため,そのなかにCOVID—19が紛れていてもなかなかわかりません.
 簡易的なトリアージの結果,「感冒様症状がある」場合,感冒様症状の患者さんとそのほかの患者さんが同じ空間に滞在しないよう可能な限りの動線分離を行うべきである,と『新型コロナウイルス感染症(COVID—19)診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の手引き』【1】に記載されています.
 とはいえ,感染症指定病院でもない市中病院で,再診外来における動線分離というのはきわめて至難の業であって,慢性咳嗽や慢性の微熱を有する患者さんと,そのほかの再診外来患者さんの動線を分離させるのは難しい状況でした.
 発熱している人や,急性感染症が疑わしい人には,スタッフが見てそうだとわかるように,患者ファイルに目印をつける案が出ました.もちろん完全に分離できるわけではありませんが,発熱している人の横で健康な人が採血をされないような工夫を講じたわけです.

ここから先は

2,213字 / 1画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?