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研修医のための微生物レクチャーシリーズ グラム染色所見と培養結果からどう考える?(16)

[第16回]グラム陽性桿菌編①

黒田浩一 くろだ ひろかず
神戸市立医療センター中央市民病院感染症科

(初出:J-IDEO Vol.6 No.1 2022年1月 刊行)

前回の連載では,Streptococcus bovis groupによる感染症について説明しました.前回までの15回の連載で,グラム陽性球菌について一通り説明し終わりましたので,今回からグラム陽性桿菌(Gram-positive rods:GPR)について解説していきます.

GPRが臨床検体から検出された場合,皮膚の定着菌または汚染菌(contamination)を検出していることが多く,治療対象とならないことがほとんどです.特に,血液培養から検出された場合は,一部の例外を除き,ほとんどがcontaminationと考えられてきました【1,2】.しかし,免疫不全者においては,真の菌血症の原因となることも比較的多いことがわかってきています【3~5】.今回は,GPRの主にグラム染色像をもとにした実践的分類についてお話します.

1.グラム陽性桿菌の実践的分類

グラム染色像からGPRを分類する際,分岐の有無,菌体の大きさ,配列(連鎖・柵状)の3点に特に注目します[表1]【6~11】.また,血液培養から検出された菌の場合は,検出されたボトルの種類(好気・嫌気・両方)と溶血の有無も参考にします.もちろん,患者背景(年齢・基礎疾患など)や推定されるfocusも重要であり,それを加味して菌名を推定します[表2].
 グラム「陽性」桿菌は,多形性を示したり(いろいろな形態をとる),染色性が悪くグラム「陰性」菌にみえたりすることがあります[表3,4]【7,9,11】.そのため,患者背景や感染focusから推定される細菌とそのグラム染色像が一致しない場合は,これらの点を加味して慎重に菌名を推定する必要があります.

【重要】GPRは,分岐の有無,菌体の大きさ,配列をもとに分類する


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