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微生物検査 危機一髪!(21)

[第21回]微生物検査で何がわかるのか

山本 剛 やまもと ごう
神戸市立医療センター中央市民病院臨床検査技術部

(初出:J-IDEO Vol.4 No.5 2020年9月 刊行)

 微生物検査はどのように使うべきか? という話題は学会や研究会でいつも出てくる.どうして同じ話題が何年も続いているのか,疑問に思うことがある.今回はそんな疑問について,微生物検査室で行っている研修医の実地指導から得たものを解説していきたい.

1.微生物検査の利用

 研修医が感染症患者の担当となれば,検査室に微生物検査の読み方を相談してくる病院は多くあると思う.しかし,思い返せばこの光景は数年前では当たり前ではなかった.そもそも,微生物検査室に行くと何がよいか? メリットがあるのか? など教わる機会が少なかったからである.
 前任地の西神戸医療センターでは,研修医の2年次ローテのなかの希望者には微生物検査ローテがあり,毎年何人も研修医を受け入れてきた.そのなかで,研修医が抱える悩みはたくさんあることが毎年うかがえた.例えば,教科書や参考書を見ると“感染臓器を特定し,早めに適切な抗菌薬の投与を開始すること”と書かれているが,研修医に治療方針の決定までの手順を聞いてみると,症状を聞いてある程度まで感染臓器が絞り込めたら,血液検査に加え,超音波検査やCT検査に進み,より多くの診断アプローチを増やしていくという.症状に合わせて微生物検査が行われる機会もあるが,身体所見の確認や患者情報の聴取が不足していることから,感染臓器や病原菌を推測するための情報が少なすぎるため,不明熱扱いになり血液培養+尿培養+喀痰培養とセット化された材料が提出されている例を多くみてきた.血液培養はフォーカス絞りや重症化予測の指標などを考慮する上で必要であり,例えばKlebsiellaが検出されると消化器疾患や泌尿器疾患との関連性が見えてくるため,検出菌に応じた感染臓器のアプローチが可能になるのが大きなメリットである.しかし,尿路感染症の症状がないのに尿を出す,呼吸器症状がないのに喀痰は出しているといった例を垣間見る.検査を受け持つ立場からするとモチベーションの上がらない検査の一つである.
 微生物検査で検出された微生物を1つ1つの臨床的意義づけを行うことができれば,より有効活用が可能になると思われる.

2.それは起炎菌なのか?

 検出された微生物の臨床的意義づけを行うことは簡単ではない.微生物検査でわかることは,検出微生物と菌量,その感受性(+外毒素などの病原因子)である.例えば以下のような相談を持ちかけられた場合はどう考えるのか.

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