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研修医のための微生物レクチャーシリーズ グラム染色所見と培養結果からどう考える?(8)

[第8回]グラム陽性球菌 ⑧

黒田浩一 くろだ ひろかず
神戸市立医療センター中央市民病院感染症科

(初出:J-IDEO Vol.4 No.3 2020年5月 刊行)

 前回の連載では,A群レンサ球菌による咽頭炎の診断,A群レンサ球菌による感染症全般の治療と感染対策について説明しました.今回は,β溶血性レンサ球菌のひとつであるB群レンサ球菌〔Streptococcus agalactiae,Group B Streptococcus,(GBS)〕による感染症とその治療について解説します.

(1)GBSによる感染症総論

1.GBSによる感染症:3つのグループに分けて考える[表1]


表1]侵襲性GBS感染症のグループ別の感染focus

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SSTI:skin and soft tissue infection(皮膚軟部組織感染症)

 GBSによる感染症は,主に「新生児,妊婦,妊婦を除く成人」の「3つ」のグループに発症します.新生児の感染経路は,子宮内と産道(母子感染)であり,focus不明の菌血症,sepsis,肺炎,髄膜炎を呈することが多く【1】,妊婦では,菌血症,絨毛膜羊膜炎,産後の子宮内膜炎,尿路感染症を呈することが多いと報告されています【2~6】.妊婦以外の成人では,皮膚軟部組織感染症,focus不明の菌血症,骨関節感染症,尿路感染症などが多く【7】,主な感染focusは,グループによって異なっています[表1].本稿では,主に,近年増加傾向である「妊婦以外の成人(以下,成人と記載する場合は,妊婦を含まない成人を意味するものとします)」のGBS感染症について詳しく説明していきます.

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