呼吸器感染症よもやま話(6)
[第6回]気管支鏡って結構しんどい?
倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科
(初出:J-IDEO Vol.2 No.1 2018年1月 刊行)
鎮静をかけているのに……
呼吸器感染症の診断に気管支鏡は有用です.当院で行う気管支鏡症例の多くは肺癌疑いですが,それ以外はほぼ全例呼吸器感染症です.気管支鏡のファイバーを挿入するときに,患者さんがパニックにならないために鎮静をかけます.気道壁にカメラがちょこっと触れるだけで「ゲホゲホ!」と咳が出るのが一般的な反射です.気管支壁に一切触れずに検査するなんて,「ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー」に出てくるイライラ棒くらい難しいことです.あ,少しネタが古いですかね.
気管支鏡中に使用する薬剤は主にミダゾラムですが,どれだけ深く寝てもらっても,あのにっくき喉頭蓋を通過する瞬間だけは大きな咳が出てしまうことが多いです.一度鎮静の淵から現実に引き戻された患者さんは,それで再び暴れだすこともあります.
そのため,うまく鎮静しないと患者さんは気管支鏡でツライ思いをしなければならないのです.
そんな思いをした患者さんは,「もう二度と受けたくないです!」とあなたに言ってくれるでしょう.呼吸器内科医にとってもっとも不名誉な言葉です.ミダゾラムのせいで「検査のことをあまり覚えていないんです」と言ってくれることもありますが.
個人的にはミダゾラム+フェンタニル【1】が最強の鎮静法ではないかと思っていますが,これをルーチンでやっている施設はほとんどないかもしれません.
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