呼吸器感染症よもやま話(35)
[第35回]Mycobacterium abscessusはヒト-ヒト感染するよう進化していく?
倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科
(初出:J-IDEO Vol.6 No.6 2022年11月 刊行)
Mycobacterium abscessusのジレンマ
抗酸菌のうち,迅速発育菌であるMycobacterium abscessus(M. abscessus)は,特に沖縄や九州地方などの気温が高い地域で非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria:NTM)症の多くを占めるやっかいな菌です.治療法が非常に限られていて,国際ガイドライン【1】ではもっとも感受性が保たれている場合(subspecies massilienseなど)においても,初期治療はイミペネム+アミカシン+マクロライドの3剤が必要になり,維持治療では実質マクロライドしか選択肢がないというジレンマがあります[表1].チゲサイクリン,リネゾリド,吸入アミカシンは保険適用がなく,クロファジミンは査定はされなくなりましたが魚鱗癬を伴う皮膚着色が必発するという強烈な副作用の観点から,その半減期の長さもあって安易に投与できません.
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