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研修医のための微生物レクチャーシリーズ グラム染色所見と培養結果からどう考える?(11)

[第11回]グラム陽性球菌 ⑪

黒田浩一 くろだ ひろかず
神戸市立医療センター中央市民病院感染症科

(初出:J-IDEO Vol.4 No.6 2020年11月 刊行)

 前回の連載では,肺炎球菌が起こす感染症とその治療について説明しました.今回は,腸球菌(Enterococcus属)による感染症について解説します.文字数の都合上,腸球菌による感染症の治療については,次回の連載で説明します.

1.腸球菌の微生物学的特徴

 Enterococcus属は,腸管内の常在菌の1種です.形態はやや楕円形(oval shaped)の,短いまたは中等度の長さのchainを形成する(2または4連鎖のことが多い)グラム陽性球菌で,グラム染色所見からある程度菌名の推定が可能です[図1].血液寒天培地上では,通常α溶血またはγ溶血を示します.血液・尿・腹水などから検出されることが多く,検出された場合は,カテーテル関連血流感染症,感染性心内膜炎,尿路感染症,腹腔内感染症などの可能性を検討します.

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