基礎から臨床につなぐ薬剤耐性菌のハナシ(34)
[第34回]P. aeruginosaの臨床像と耐性機構
西村 翔 にしむらしょう
神戸大学医学部附属病院感染症内科
(初出:J-IDEO Vol.6 No.5 2022年9月 刊行)
さて,β-ラクタムに対する耐性機構を中心に説明してきましたが,今回はいよいよP. aeruginosaが産生するβ-ラクタマーゼについて解説します.
P. aeruginosaにおけるPDC(AmpC)の制御機構
P. aeruginosaが染色体性に産生するβ-ラクタマーゼはPseudomonas derived AmpC(PDC)と呼ばれるAmpCです.AmpCの制御機構に関しては,J-IDEO 2017 Vol.1 No.3でまとめましたが,EnterobacteralesとP. aeruginosaで異なる点,2017年以降の新たな知見について,ここで確認しておきます.
P. aeruginosaとEnterobacterales(ここでは代表してEnterobacter cloacaeと比較します)を比較した場合に,大きく異なるのは,①P. aeruginosaではAmpD以外にAmpDh2,AmpDh3の2種類のamidaseを有する点と,②P. aeruginosaではAmpCの制御にdacB遺伝子が関与する点,この2点です[図1].
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