微生物検査 危機一髪!(19)
[第19回]研修医へグラム染色所見の説明
山本 剛 やまもと ごう
神戸市立医療センター中央市民病院臨床検査技術部
(初出:J-IDEO Vol.4 No.3 2020年5月 刊行)
新型コロナウイルス感染症が世間を席巻しているため,医療従事者はもとより世間一般的に感染症≒新型コロナウイルス感染症となっているのではないでしょうか.4月から新規採用者がたくさん入社してきますが,おそらく新型コロナウイルス感染症の話題でいっぱいになると思います.
新型コロナウイルス感染症が流行り出しても,今までの感染症診療は大きく変化がないため,肺炎や尿路感染症は毎日病院で診られる疾患であることは変わりありません.そのため,研修医にグラム染色を教育する機会はそこら中にゴロゴロしています.
1.感染症の患者は普通にやってくる,きっとくる.
医療技術が進歩すると,その分野で行う治療や処置の方法も次々と新しいものが出てきます.救急で心臓カテーテルが適用となる症例は少ないが,肺炎や尿路感染症を診る症例は多くあります.感染症は心不全や癌で入院した患者が入院中に感染症を発症するように診療科や疾患を問わず遭遇することでしょう.
研修が終わって外科系に進むので,感染症はあえて習得するスキルじゃないからとか,なんでも効く抗菌薬があるのだから別に原因菌を特定しなくても治ればいいんじゃないかとか思っているかもしれません.外科系でも誤嚥性肺炎や尿路感染症は普通に遭遇するのだから,研修医のうちに変なクセをつけることはすべきでないと考えます.
2.グラム染色は病院の規模に捉われない検査
1)研修医と臨床検査技師の融合
研修医は何を優先に研修病院を選んでいるのでしょうか? 大学病院,著名な臨床医が在籍している病院,外観がキレイで設備が整っている病院,研修プログラムがしっかりしている病院,都市部で多くの医療スタッフがいる病院,中規模の自治体病院,小規模の病院,実家の近くの病院,給料が良い病院……etc.
一方,臨床検査技師は何を優先に就職先を決めているのでしょうか? 給料が良い病院,安定感がある外観の大きな病院(大学病院や自治体病院),お付き合いしている異性がいる近くの病院,実家の近くの病院…… etc.
もともと,職種も違えば,そこに集まった理由も違うと思います.たまたま,感染症になった患者とそこから採取された検体がグラム染色という診断ツールで繋がり,感染症診療へと融合していると解釈したほうがよいのかもしれません.感染症を勉強しようと思ってその病院を研修先に選ぶ医学生は非常に少ないことは理解したうえで,研修医と接する必要があります.
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