マイナーエマージェンシー_記事

京都府立医科大学Presents マイナーエマージェンシー!(1)〜その診療、本当に正しいですか?〜

京都府立医科大学Presents マイナーエマージェンシー!(1)
〜その診療、本当に正しいですか?〜
[第1回]眼の診察,基本の「キ」 担当:宮本雄気
監 修:太田 凡 Bon Ota
京都府立医科大学附属病院救急医療部/救急医療科
代 表:宮本雄気 Yuki Miyamoto
京都府立医科大学附属病院・東京大学公共健康医学専攻
副代表:牧野陽介 Yosuke Makino
京都府立医科大学附属病院救急医療部/救急医療科

「絶対に断らない救急」をポリシーとする府立医大救急科.それを実現できるのは,「魚を単に与える」ような単純な知識だけではなく,応用の利く「魚の釣り方」を知っているから.そのコツを皆さんにお教えします!


 皆さん,「マイナーエマージェンシー」と聞くとどんなイメージをもっていますか? 「自信がないから診療したくないな」とか「その場で調べながら,何とかしのいでいます」なんていう人が多いのではないでしょうか? かといって,なかなか専門書や分厚い教科書を読むのはちょっと……と思っているかもしれません.ここではそんなマイナーエマージェンシー診療のコツを「断らない救急」をポリシーにしている救急医の視点から伝授しようと思います!

【人物紹介】
後期研修医 M先生:卒後3年目.救急科後期研修医.細かい知識にはまだまだ自信がない.
指導医 O先生:「断らない救急」をポリシーに皆を時に優しく,時に厳しく指導する.

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症例
55歳,女性.特記すべき既往はなし.
夜,本を読んでいたところ突然,右眼痛を自覚し深夜に救急受診.
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M先生  うーん……眼の主訴だから,とりあえず眼科に振っていいっスかね?
O先生  ……まずは自分たちで診療しようよ.追加の病歴は何かあるかな?

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追加病歴
明らかな異物の混入はなし.眼は少し見えにくい.眼脂はない.
嘔気なし.頭痛よりも眼痛を訴える.少し充血しているのが気になる.
2週間使い捨てタイプのソフトコンタクトレンズを使用しており,2週間を超えてコンタクトレンズを長期装用していることはない.洗浄液はMPS(multi purpose solution:レンズの洗浄・すすぎ・保存・消毒を同じ洗浄液でできる)を使用している.
本日は寝る前にコンタクトレンズを外してから寝室で本を読んでいた.
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M先生  眼痛・充血・視力低下とくれば……これは緑内障じゃないですか⁉ すぐに眼科を呼びます!
O先生  確かに急性緑内障発作は鑑別にあがるね.もちろん眼科のドクターを呼んでも間違いではないけれども,もう少し診察できない?
M先生  えー……(これ以上,何を診察するんだろう……).
O先生  もしかしたら細菌性結膜炎やコンタクトレンズによる角膜障害かもしれないよ? それに,ここは全科の医師が当直している大学病院だからいいけれども,院内に眼科の先生がいないときにも同じように他院に紹介するかな? 離島で診療していたらこの段階で夜中に船やヘリコプターを手配してまで紹介するかな?
M先生  えー……(だって,ここ大学病院だし……).
O先生  じゃあ,少し急ぎながら一緒に診療してみようか.
M先生  (眼科の診察って全然勉強してこなかったんだよな…….細隙灯とかもどうやって使うかわからないし…….)

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