研修医のための微生物レクチャーシリーズ グラム染色所見と培養結果からどう考える?(17)
[第17回]グラム陽性桿菌編②
黒田浩一 くろだ ひろかず
神戸市立医療センター中央市民病院感染症科
(初出:J-IDEO Vol.6 No.2 2022年3月 刊行)
前回の連載では,グラム陽性桿菌の実践的分類について説明しました.今回は,比較的よく経験するグラム陽性桿菌であるBacillus属について,そのなかでも,病院内で免疫不全者や静脈カテーテル留置中の患者に感染症を起こすBacillus cereus(B. cereus)を中心に解説していきます.
1.Bacillus属の微生物学的特徴
Bacillus属は,世界中の土壌・水などに存在する芽胞形成グラム陽性桿菌です.芽胞を形成するため,熱や乾燥に強く,いろいろな環境に耐えうる細菌です.200以上のspecies(種)で構成されていますが,ヒトに対して病原性を示すものは少なく,Bacillus anthracis(B. anthracis,炭疽菌)とB. cereus(セレウス菌)がヒトに病原性を持つ菌種として重要です【1,2】.日本の臨床現場で皆さんが遭遇するBacillus属は,ほとんどの場合B. cereusで,時々Bacillus subtilis(B. subtilis)を経験することがある程度,だと思います.B. cereusは,環境中に広く存在し,食べ物も汚染されていることがあるため,ヒトの消化管内に一時的に定着することがあります.また,様々な病院環境から検出されることも知られています【3】.
1.分類
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