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Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(18)

[第18回]抗菌薬適正使用の新たなフェーズへ!―新薬採用の熱いアプローチにどう対応するか?―

岸田直樹 きしだ なおき
感染症コンサルタント/北海道科学大学薬学部客員教授

(初出:J-IDEO Vol.4 No.1 2020年1月 刊行)

はじめに

 前回は,ASTとしての介入のなかで,「抗菌薬を開始してみたもののどうしてよいかわからない……」場合について考えてみました.そのなかでも,適切な診断がついているにもかかわらず,引っ込みがつかなくてどうしたらよいか? となりがちなのが,がん患者・高齢者で,そのような患者さんについての相談がますます増えていることが容易に予測されます(がん患者も高齢者も増える一方です).たとえば,膿瘍といえばドレナージが基本ですが,がん患者で腫瘍が一塊になり,さらに周囲臓器と癒着しているなど,完全に切除できない場合の抗菌薬治療期間はどこにも書いてありません.クリアカットに「○日間です!」とか,「画像上での膿瘍消失まで治療です!」と言いたいところですが,このような状況ではどこまでが膿瘍かということも診断しにくいので,そんな期間を提示できている時点で怪しさ満点です.ASTをしていると,適正使用のための抗菌薬治療期間をズバッと言いたくなってしまいますが,そんな簡単に提示できる感染症であれば,これからはASTが介入する必要がないかもしれません.このような場合の解決方法として,患者さんの予後や今後の治療方針を主治医がどのように考えているかを確認することが抗菌薬治療にも影響します.主治医は,しっかり感染症を良くしてから化学療法をと考えているのかもしれないし,そうではないのかもしれません.単純に感染症としてどうしたらよいかと悩まず,全体的な方針に従って一番スムースに進めるためには感染症の治療をどうしたらよいかと考えると答えが出てきます.これも抗菌薬の適正使用のひとつではないでしょうか?
 さて,こんなちょっとアドバンスなAST介入の話をしてきましたが,今回は抗菌薬適正使用の変化について話をしたいと思います.なんとなく気がついている方も多いかと思いますが,いま感染症診療の定説が大きく崩れてきており,適正使用の考え方がさらにレベルアップしてきています.

抗菌薬適正使用とその周辺が大きく変化してきている!

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