見出し画像

Dr.岸田の感染症コンサルタントの挑戦(17)

[第17回]AST への抗菌薬相談! 困るシチュエーション
「抗菌薬を開始してみたもののどうしてよいかわからない……」


岸田直樹 きしだ なおき
感染症コンサルタント/北海道科学大学薬学部客員教授

(初出:J-IDEO Vol.3 No.6 2019年11月 刊行)

はじめに

 前回は,ASTとしての介入のなかで,「感染症かどうかさっぱりわからない」症例第2弾として,培養結果の最終報告が出ていない段階で,どのように主治医にアプローチするか? について確認しました.最終報告はきていませんので,まだ確定診断にはいたっていません.そのため基本的なアプローチは第16回と変わりません.途中経過でもなんらかの情報を持っていると,つい断定した言い方をしたくなります.たしかに,そのほうがインパクトはありそうですよね.そのようなアプローチがダメとは思いません.筆者も感染症医としてスタートした最初のころはときどきやっていました.しかし,それで得られたインパクトはその瞬間の自分にとっての納得感であることが多く,解釈が間違っていた場合に言い訳がましいことを言っている自分がいないでしょうか? 掴んでいる情報もやや控えめに提示し,主治医とともに治療方針を決めたという過程をとれるようになることが,今後のより良い治療方針にもつながるということを日々感じます.また,ガイドラインやマニュアル通りの治療が正しい治療ではないことも確認しました.適正使用を推進するということはガイドラインやマニュアル通りの治療をすることではありません.そのような姿勢では,患者・主治医にさまざまなことを押し付けがちです.目の前の一人の患者さんが良くなってくれるための現時点でのベストをみんなで議論し探すことが重要です.そして最後に,とても重要なこととして,「多くの患者にとって感染症はメインの病態ではない」という考えをお伝えしました.感染症に関わる立場からすると感染症が病態のメインに見えがちです.しかし,患者・主治医サイドからすると感染症はメインの病態ではなくもともとの病気の治療を妨げているものであることが多いのです.つまり,感染症治療の方針以前に,原疾患に対する方針がどうなっているか? があります.そこをいかにスムーズに行えるようにするか? それが感染症治療を考えるうえで重要なのです.
 さて,今回はASTへの抗菌薬相談! 困るシチュエーションとして,「抗菌薬を開始してみたもののどうしてよいかわからない……」へのアプローチです.主治医が困っているので相談されることが多いですが,提案した自分たちが困る場合もありますね.

「抗菌薬を開始してみたもののどうしてよいかわからない……」場合とは

 感染症診療のなかでは,治療を開始したのはよいが,その後の経過がイマイチでどうしてよいかわからない→ひっこみがつかない……,というケースに遭遇することがあります.この場合,

ここから先は

3,785字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?