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抗菌薬相互作用整理BOX(30)

[第30回]HBV核酸アナログ四銃士


山田和範 やまだ かずのり
中村記念病院薬剤部係長/北海道科学大学客員教授

(初出:J-IDEO Vol.7 No.5 2023年9月 刊行)


はじめに

前回はC型肝炎ウイルス(HCV)治療薬である直接作用型抗ウイルス剤(direct—acting antivirals:DAAs)の相互作用について整理しました.
 B型肝炎ウイルス(HBV)感染症に目を向けると,HBV持続感染者は世界で約4億人と推定されています1).わが国におけるHBVの感染率は約1%とされ,主な感染経路は母子間感染になります.宿主の免疫応答が未発達な出産時ないし乳幼児期においてHBVに感染すると,9割以上の症例は持続感染に移行します.そのうち約9割は若年期にHBe抗原陽性からHBe抗体陽性へとHBe抗原セロコンバージョンを起こし,非活動性キャリアとなり,ほとんどの症例で病態は安定化します.しかし,残りの約1割で,ウイルスの活動性が持続して慢性肝炎の状態が続き,年率約2%で肝硬変へ移行し,肝硬変は年率約5~8%で肝細胞癌が発生し,肝不全に進展するとされています2~4).近年では,肝炎が遷延し慢性化しやすいゲノタイプAのHBV感染が増加傾向にあります5).
 B型慢性肝炎治療には,インターフェロン療法,ステロイド離脱療法などがありますが,近年では核酸アナログ製剤の経口抗ウイルス療法が積極的に行われるようになってきました.そんななか,2022年5月末には核酸アナログ製剤であるアデホビルピボキシル(ADV)の我が国における販売が完全終了となりました.HBV治療薬も整理が進んでいます.
 現在,我が国で臨床使用可能なHBV治療薬の核酸アナログ製剤は,ラミブジン(LAM),エンテカビル(ETV),テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF),テノホビルアラフェナミドフマル酸塩(TAF)の4薬剤です.今回は,これらについて整理したいと思います.

相互作用のメカニズム

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