呼吸器感染症よもやま話(11)
[第11回]あるのかないのかカンジダ肺炎
倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科
(初出:J-IDEO Vol.2 No.6 2018年11月 刊行)
抗真菌薬で治ったアレはカンジダ肺炎だったのか?
抗癌剤投与後の男性がいました.G—CSF製剤を用いているにもかかわらず,発熱性好中球減少症に陥り,好中球はほぼゼロの状態でした.次第に,両肺に粒状影が目立つようになってきました.免疫不全の状況で粒状影が多発すると「ウイルス性肺炎だろうか」との考えが頭をよぎるのですが,喀痰から大量のカンジダが検出されたのです.
いや,口腔内のカンジダだろう,これは.当然そう思っていたのですが,口腔内はそこまで汚くありません.そしてだんだんと血清β—Dグルカンが上昇し始め,良質な喀痰からもカンジダが検出され始めたのです.……カンジダ肺炎だろうか? ブンブンブン,それはないだろう,と首を振る.そうだ,カンジダ食道炎かもしれない.口腔ケアしたって,食道に病変があれば喀痰からカンジダは検出され続けるだろうし.
肺内の粒状影がカンジダ肺炎かどうか結論を出すためには,気管支鏡検査をすればよい.しかし,すでに患者さんの酸素投与はリザーバーマスクに到達しており,経験的治療を行わざるをえませんでした.いろいろと議論した結果,結局この患者さんには,アムホテリシンBリポソーム製剤(アムビゾーム®)が投与されました.すると,血球が回復するにつれてみるみる陰影が消えていくではありませんか.血清β—Dグルカンも減少しました※.
※ 効果判定にβ‒D‒グルカンを用いるのもどうかと思いますが…….
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