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呼吸器感染症よもやま話(1)

[第1回]未知の呼吸器感染症,肺アスパラガラス症

倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科

(初出:J-IDEO Vol.1 No.1 2017年3月 刊行)

 私は大阪府堺市にあるマンモス呼吸器病院で呼吸器内科医をしています.7つある病棟のほぼすべてが呼吸器科という類をみない呼吸器疾患の高度専門病院としてその名を国内に轟かせています(こう書いておくと病院の宣伝になるらしい).市中で稀に遭遇する呼吸器疾患が当院ではcommon diseasesになっているため,私も一体どの疾患がcommonなのかuncommonなのかわからなくなってきました.リンパ脈管筋腫症(lymphangiomyomatosis,LAM)なんて呼吸器内科医が一生に一度出合うか出合わないかという稀な疾患らしいのですが,当院では毎日のように診察している医師もいます.


 さて,教科書では比較的稀とされている真菌感染症である肺アスペルギルス症.私は頻繁にこの疾患の患者さんを診察しているのですが,第1回目はこのアスペルギルスについて書いてみたいと思います.これを執筆している時点で私は17人ほど患者さんを受け持っていますが,そのうち3人が肺アスペルギルス症です.崇高なコラムを期待されて読み始めたそこのあなた,残念ながらこのコラムを読んでも肺アスペルギルス症に対する最新のエビデンスが得られるわけではないので,あしからず!


 私の勤務する病院には,時折近隣の大学から医学生が臨床実習にやってきます.そのため私自身も医学生にレクチャーをすることがあるのです.「では真菌球fungus ballをつくる典型的な病原微生物は何かね?」と大学の講師きどりで質問をしたところ,『year note』を片手にトンデモ解答を返してくれた学生がいました.

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