見出し画像

研修医のための微生物レクチャーシリーズ グラム染色所見と培養結果からどう考える?(7)

[第7回]グラム陽性球菌 ⑦

黒田浩一 くろだ ひろかず
神戸市立医療センター中央市民病院感染症科

(初出:J-IDEO Vol.4 No.2 2020年3月 刊行)

 前回は,GPC chain(Gram-positive cocci in chain,chainを形成するグラム陽性球菌)の分類と,β溶血性レンサ球菌のうち,A群レンサ球菌(Streptococcus pyogenes,group A Streptococcus,GAS)が引き起こす感染症を,血液培養陽性例を中心に説明しました.今回は,GASによる感染症のうち最も頻度の高い急性咽頭炎の診断について述べた後,GAS感染症の治療・感染対策について解説します.

(1)A群レンサ球菌による咽頭炎

 急性発症の咽頭痛で来院した成人の5~15%,小児の20~30%が,GASが原因とされています【1】.そのほかの原因として,抗菌薬投与が不要なウイルス性咽頭炎がほとんどを占めるため,抗菌薬治療の適応のあるGASによる咽頭炎を正しく診断または除外することは,抗菌薬適正使用の観点からとても重要です.原則として,急性咽頭炎の原因微生物で,抗菌薬適応があるのはGASのみです.ジフテリアや淋菌性咽頭炎などは,抗菌薬の使用が必要な感染症ですが,例外的ですので,ここでは割愛します.また,G群レンサ球菌,C群レンサ球菌,Fusobacterium necrophorumによる咽頭炎は,抗菌薬治療したほうがよい可能性を指摘する専門家もいますが,その結論はでていません【1~4】.ちなみに,後述するCentor criteriaの生みの親のCentor先生は,Fusobacterium属なども治療対象(Centor criteria 3点以上の場合は,GASの検査をせずに全例治療)とすることを推奨しています【3】.

1.GASによる咽頭炎の診断

ここから先は

22,261字 / 4画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?