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研修医のための微生物レクチャーシリーズ グラム染色所見と培養結果からどう考える?(25)

[第25回]グラム陰性桿菌編①


黒田浩一
 くろだ ひろかず
神戸市立医療センター中央市民病院感染症科

(初出:J-IDEO Vol.8 No.3 2024年5月 刊行)


 前回の連載では,Actinomyces属について説明しました.前回までの連載で,グラム陽性桿菌について一通り説明し終わりましたので,今回からグラム陰性桿菌(Gram-negative rods:GNR)について解説していきます.グラム陰性桿菌編の第1回と第2回(次回連載)は,グラム陰性桿菌の形態(グラム染色像)からの分類についてお話します.

グラム染色

 まずグラム染色の分類について復習しましょう.グラム染色は,安価・簡便・迅速に施行可能な,細菌の染色性・形態・配列を評価する微生物学的検査です.グラム染色像と患者背景・臨床経過と組み合わせることで,早期に感染巣と原因微生物の推定・同定が可能となり,適切な抗菌薬の選択につながります.他にも細菌の分類方法はいろいろありますが,一般的な臨床現場(救急外来,一般外来,一般病棟,集中治療室など)では,グラム染色による分類が最も容易に実践可能かつ有用だと思われます.
 ほとんどの細菌は,「グラム陽性」と「グラム陰性」,「球菌」と「桿菌」の2×2=4通りに分類できます[表1].例外的に,グラム陽性にも陰性にも染まりうる菌(Gram-variable,例:Acinetobacter属)やうまく染色されないために幽霊のように透明の菌が浮かび上がって見えるもの(Gram-ghost,例:抗酸菌)も存在しますが1,2),かなり稀です.4つのタイプのいずれかに分類した後,形態から細分類して,患者背景と臨床経過を踏まえて,菌名を推定して,治療方針を決定する,というのが一般的な感染症診療の流れです.本号と次号では,グラム陰性桿菌の形態からの細分類について解説していきます.

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