脳トレ診断推論_記事

脳トレ診断推論 ハイブリッドリーズニングを使いこなせ!(1)

脳トレ診断推論 ハイブリッドリーズニングを使いこなせ!(1)
[第1回]脳トレ診断推論とは?
上原孝紀 Takanori Uehara
千葉大学 診断推論学/総合診療科

千葉大学総合診療科のエースが,同科で行われている診断推論トレーニング法を伝授します!それは,暗黙知としてスルーされているような問題を言語化していく「脳トレ」.さあ,皆さん一緒に診断力を向上させましょう!


Ⅰ はじめに

 本連載ではすぐに使える基本的事項を身に付けたい初学者向けの“for novice”と,ちょっと先取りする診断推論を身に付けたい若手指導医への“for advanced”な知見を織り交ぜて,千葉大総診で展開している診断推論トレーニング法を紹介します.このトレーニングは,普段は暗黙知としてスルーされているような問題を,一つひとつ言語化していく,まさしく「脳トレ」なのです.思考過程を言語化して,一緒に診断力を向上させましょう!


Ⅱ ハイブリッドリーズニングとは

 記念すべき『J—COSMO』の初号であり,読者の皆さんにとてもとてもお伝えしたいことが,このハイブリッドリーズニングを応用した診断推論トレーニングです.このハイブリッドリーズニングとは,forward and backward hybrid reasoning,つまり前向き推論と後ろ向き推論のハイブリッドのことです.前向き推論と後ろ向き推論といわれてもあまり馴染みがないですよね.少し補足すると……【1】
① 前向き推論:客観的かつバイアスのかからない状態でデータを集めながら問題解決を進めていく手法.
② 後ろ向き推論:最初に疾患仮説を立てて,仮説を支持あるいは棄却するキーフィーチャーを探す手法.
 これだけじゃ,何のことか理解できませんよね.そこで,本連載では,これらのハイブリッドリーズニングをケースベースで噛み砕いて解説し,実臨床へ応用できることを目指します.この診断推論トレーニング法を身に付けることのメリットとは……

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➡for novice 0
個々のケースを題材にして,明日から使える一般論を身に付けられる!
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➡for advanced 0
指導医の推論過程を理解できるようになり,診断推論スキルと指導力が向上する!
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この2つを同時に達成できることです.
 本連載は,時間がないときには,すぐに使えるnovice向けの内容を中心に読んでいただき,時間があるときに,指導医向けのadvancedな内容を読んでいただけるように,それぞれのレベルを明示して構成します.ちなみに本連載を開始するにあたり,私個人としては,ハイブリッドリーズニングの総論的な話をぜひ最初にしたい思いであふれているのですが……,難しい用語がたくさん並んできて(言ってみればオタク的内容),認知心理学に興味のある方以外は寝落ちしてしまうおそれが多大にあると若手にたしなめられたので(笑),とっつきやすいケースを題材にしたトレーニングを中心としました.総論的な話を含むadvancedな内容は,適宜ケースの解説の間に分割して組み込み,あるいは読者の皆さんのイメージのなかにハイブリッドリーズニングの全体像が何となく見えてきてから,少しずつ紹介していきたいと思っています.

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