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研修医のための微生物レクチャーシリーズ グラム染色所見と培養結果からどう考える?(6)

[第6回]グラム陽性球菌 ⑥

黒田浩一 くろだ ひろかず
神戸市立医療センター中央市民病院感染症科

(初出:J-IDEO Vol.4 No.1 2020年1月 刊行)

 これまで5回にわたってGPC cluster(Gram-positive cocci in cluster, clusterを形成するグラム陽性球菌)について説明してきました.今回の連載からは,GPC chain(Gram-positive cocci in chain, chainを形成するグラム陽性球菌)について説明していきます.

1.GPC chain(連鎖を形成するグラム陽性球菌)総論

1.グラム陽性球菌の分類
 復習です.まずグラム陽性球菌は,clusterを形成するもの(GPC cluster)とchainを形成するもの(GPC chain)に分類します[図1].GPC clusterは,Staphylococcus属で,Staphylococcus aureusとCoagulase-negative Staphylococci(CNS,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)に分類されます.一方,GPC chainは,主にStreptococcus属とEnterococcus属が含まれます.GPC clusterの経験的治療は,MRSAとMRCNSを考慮して,バンコマイシン(状況によってはセファゾリンが選択されることもあるかもしれません)が使用されることが多いですが(ペニシリンGは耐性である可能性が高い),ほとんどのGPC chain(Enterococcus faeciumを除く)は,ペニシリン感受性であり,菌名が同定される前からペニシリンGで治療することが可能です.
 このように,最終同定前の時点で選択すべき抗菌薬が異なるため,GPC clusterとGPC chainを分類することは,非常に重要だと思います.ここまでは,前回までの連載で説明してきた通りです.

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