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呼吸器感染症よもやま話(22)

[第22回]Mycobacterium avium complex はどこから感染する?

倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科

(初出:J-IDEO Vol.4 No.5 2020年9月 刊行)

ヤツらは身の回りにひそんでいる

 肺Mycobacterium avium complex(MAC)症は,呼吸器内科医にとって非常に長い付き合いになる呼吸器感染症の1つです.「排菌陰性化※から1年」というのが治療期間の目安ですが,強い推奨というわけではなく,2年,3年と続ける患者さんもザラにいます.ちなみにこの1年という治療期間は,肺非結核性抗酸菌(NTM)症全般に言えることで,MAC以外のM. kansasiiも,Mycobacteroides abscessusも同じ治療期間になっています.
 肺MAC症に対してキードラッグであるマクロライド系抗菌薬を導入したはいいが,1年経っても効果がないという患者さんがチラホラいます.肺MAC症が増悪するプロセスとして,最近,空洞形成や気管支拡張症で構造改変をきたした肺に,新しいMACが再感染するという説が有力です【1~3】.
 問題はどこから新しいMACに再感染するか,です.現在わかっているエビデンスから言えるのは,土壌と水の2つにヤツらはひそんでいるということです.
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※ 排菌陰性化とは,通常,喀痰の培養陰性化を指す.

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