脳トレ診断推論_記事

脳トレ診断推論 ハイブリッドリーズニングを使いこなせ!(2)

脳トレ診断推論 ハイブリッドリーズニングを使いこなせ!(2)
[第2回]お腹の右側の痛みを主訴に救急搬送された高齢男性〈前編〉
上原孝紀 Takanori Uehara
千葉大学 診断推論学/総合診療科

千葉大学総合診療科のエースが,同科で行われている診断推論トレーニング法を伝授します!それは,暗黙知としてスルーされているような問題を言語化していく「脳トレ」.さあ,皆さん一緒に診断力を向上させましょう!


Ⅰ はじめに

 この『脳トレ診断推論』は一話読切で作成して,「どの回から読んでも理解していただけるような構成にしよう!」と心に決めて出航したのですが……すみません.早速,一話で完結させることができませんでした.なぜって,第2回でとり上げた「腹痛」が診断推論を説明するのに,とても適した題材だからです(言い訳)! そこで私はひらめきました.「一話で完結できなかった分,普段,解説にあがらないような基礎的な内容も含めて,読者の皆さんと診断推論の考え方をじっくり共有しよう」と!! もちろん,読みやすさと理解を最大化するために,そして,どの回から読んでも学びが得られるように,Take home messageを区切りながら進めていきます.最終診断を当てることが目的ではなく,「どのように考えたらいいか」,「どのようにアプローチしたらいいか」にフォーカスした脳トレ診断推論を,今回も楽しんでいただけたら幸いです!

Ⅱ 脳トレ診断推論 ケース2

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66歳,男性.主訴:お腹の右側の痛み.
現病歴:2時間前から右側腹部痛を自覚.その後2回嘔吐したため地域基幹病院へ救急車で来院.
BT 36.3℃,BP 160/76 mmHg,PR 97回/分,RR 20回/分,SpO2 99%(room air).
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 提示した情報は,救急隊からの申し送り情報です.普段,救急隊からの申し送りだけで鑑別診断をどれくらい絞り込んでいますか.診断推論能力のトレーニングには受身で患者情報を待つだけではなく,限られた情報から病状を予測する,前向き推論が必須です.それでは一緒に考えてみましょう!

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