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微生物検査危機一髪(40)

[第40回]菌量について考える

山本 剛 やまもと ごう
大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)
大阪大学医学部附属病院感染制御部

(初出:J-IDEO Vol.7 No.6 2023年11月 刊行)


 微生物検査の結果に“菌量”の表記がありますが,これはなにを表しているのでしょうか? 結果の解釈が難しいので菌量の表記はオブジェ化していたりしないでしょうか.菌量は検出された微生物の横に10³ CFU/mLや(1+)といった文字で記載されており,10³ CFU/mLと10⁶ CFU/mLを比較した場合は10⁶ CFU/mLのほうが菌量が多いのはわかりますし,(1+)と(4+)を比較した場合は(4+)のほうが菌量が多いのがわかると思います.しかし,10⁶ CFU/mLと(4+)は同じ菌量を表していますが,10⁶CFU/mLは定量値,(4+)は半定量値であるため,表記は10⁶ CFU/mLのほうがわかりやすくなります.今回は,培養結果に添えられている,補助的な数値である“菌量”について考えたいと思います.

1.Colony Forming Unit(CFU)ってなに?

1)コロニーの定義

 私は高校の地理の授業で“colony(コロニー)”ということばを初めて耳にしましたが,それは植民地という語彙でプランテーション栽培を表していることばです.それ以外の意味には居留地だとか,施設,基地などの特定集団が塊をなす様を指すものがありますが,主に動物が集団をなす状態をコロニーと呼んでいます.
 また,同種および異種の植物や微生物が多数集まっている状態を指す意味も含まれているようで,こう考えるとかなり広い範囲でコロニーということばが使われているのがよくわかります.

2)CFUってなに?

 培養検査をしていると菌量と一緒にCFUという文字を見ますが,これはColony Forming Unitの頭文字をとって「CFU:シーエフユー」と言います.微生物検査では,培地上に発育した菌の数を個数で表現するのではなくCFUと表示します.これは,もともと1つのコロニーは1つの微生物が増殖してコロニー形成していることから,前述した同種の微生物が集まった状態を示しています.

3)微生物検査室ではコロニーで菌種推定ができる

 コロニーは,色や光沢,コロニーの形,大きさなど種類によって形状が異なるので,1つの培地上に発育した微生物を分類することができます[図1].そのため,発育したコロニーは培地との組み合わせにより,おおよそ菌種推定が可能です1).

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