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研修医のための微生物レクチャーシリーズ グラム染色所見と培養結果からどう考える?(19)

[第19回]グラム陽性桿菌編④

黒田浩一 くろだ ひろかず
神戸市立医療センター中央市民病院感染症科

(初出:J-IDEO Vol.6 No.5 2022年9月 刊行)

前回の連載では,代表的なグラム陽性桿菌であるCorynebacterium属について説明しました.今回は,ときどき臨床現場で出会うグラム陽性桿菌であるPropionibacterium属(正式名称はCutibacterium属)について解説していきます.

1.Propionibacterium属の微生物学的特徴

Propionibacterium属は,皮膚と粘膜表面の常在菌叢を形成している細菌です.主に,皮膚や皮脂腺,毛包に存在し,結膜,外耳,鼻咽頭,口腔,泌尿生殖器系からも検出されることがあります.特に,肩や腋窩などに多く存在することが知られています【1】.

1.分類

Cutibacterium属が正式名称ですが,なじみ深い(?)「Propionibacterium属」も,引き続き使用されていますので【2,3】,本稿では,そのなじみ深いPropionibacterium属という名称を使用していきます.
 Propionibacterium属による感染症のほとんどは,Propionibacterium(Cutibacterium)acnes(P. acnes)が原因です.P. acnesの他に,P. granulosum,P. avidumなどが検出されることがありますが,いずれも非常に稀で,ほとんど出会うことはないでしょう.

2.主な微生物学的特徴

Propionibacterium属は,嫌気性グラム陽性桿菌です.偏性嫌気性菌のため,検出するためには,嫌気培養が必要です.菌体は多形性を示し,彎曲していたり,分岐をしていたりします.また,凝集(集簇)傾向がみられることや,球桿菌がCorynebacterium属のような配列をとることもあります[図1A~D]【1】.このように,形態が非常に特徴的であり,血液培養から検出された場合,グラム染色像からPropionibacterium属と判断できることがほとんどです.

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