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呼吸器感染症よもやま話(21)

[第21回]梅雨になると増えるあの真菌!
倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科

(初出:J-IDEO Vol.4 No.3 2020年7月 刊行)

梅雨の時期に激増する呼吸器疾患


 昨年の梅雨はいつもより後ろ倒しになり,「今年は少ないな」と思っていたある病気が7月になってから多発しました.そう,夏型過敏性肺炎です.夏型過敏性肺炎の原因は,トリコスポロン属が多いといわれています.人間の髪の毛にも,毛芽胞菌と呼ばれるTrichosporon ovoidesがおり,葉物野菜(T. brassicae),チーズなどの乳製品(T. caseorum)にも存在します.しかし,これらトリコスポロン属のうち,夏型過敏性肺炎の原因真菌となる主な真菌はT. asahiiです.この真菌は,25~29℃,湿度70~90%くらいがとても居心地がよいらしく,湿った環境下で急速に増殖します.これを経気道的に吸入することで,Ⅲ型・Ⅳ型アレルギーである夏型過敏性肺炎を起こします.ただし,全員が発症するわけではないため,免疫応答が弱いなどといった宿主因子も必要になります.
 T. asahiiによる過敏性肺炎は専業主婦に多く,日本全国でだいたい年400~600人くらいが発症しているのではないかと考えられています.そのため,総合病院に勤務する呼吸器内科医なら年1回は診るイメージですね.
 2019年はトリコスポロン大豊作の年だったのか,個人的には夏型過敏性肺炎を3例経験しました.

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