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泣く子も黙る感染対策(11)

泣く子も黙る感染対策(11)
第11回 微生物検査室におけるバイオセーフティ
坂本史衣 さかもと ふみえ
聖路加国際病院感染管理室マネジャー


 効果的な医療関連感染対策の推進には,感染対策部門と微生物検査室(以下,検査室)間の円滑な連携が必要不可欠であることは言うまでもないが,その連携において検査技師の職業感染予防はどの程度注目されているだろうか.検査室には時にベッドサイド以上に高い感染リスクが存在するが,いくつかの基本的な対策を講じれば,制御し,予防することが可能である.


1.検査室関連感染とは

 検査業務を通じて獲得する感染症は,検査室関連感染(laboratory—associated infections,LAI),検査室獲得感染(laboratory—acquired infections),病理解剖関連感染(autopsy—related infections)などと呼ばれる.LAIの感染経路はエアゾルの吸入,経皮・経粘膜曝露,経口摂取に大別されるが【1】[表1],その発生頻度はよくわかっていない.過去に報告されたLAIの多くはバイオセーフティレベル(次項参照)3以上の検査室で発生しており,2以下の検査室での事例は軽症または不顕性感染であるか,感染経路を証明できないために報告されにくいと言われている【2】.このように全容は不明ながらも,適切な対策を講じない検査室におけるLAIのリスクは高いと想定されることから,世界保健機関(WHO)や米国疾病対策センター(CDC)などの専門機関はバイオセーフティに関するガイドラインを発行し,遵守を促している[表2].

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[表1]検査室関連感染の代表的な感染経路(文献1より改変)


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[表2]代表的なバイオセーフティガイドライン


2.バイオハザードとバイオセーフティ

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