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呼吸器感染症よもやま話(39)

[第39回]アスペルギルス属はなぜアゾール耐性になるのか?

倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科

(初出:J-IDEO Vol.7 No.4 2023年7月 刊行)

アゾール耐性の時代

 アスペルギルス症の治療薬としてアゾール系抗真菌薬が用いられています.アゾールがないと正直やっていけないレベルなので,アゾール耐性の症例が増えているという論文を読むたび,ガクブルしています.
 2007年に,アゾール耐性侵襲性アスペルギルス症9例のうち4例がアゾール投与歴がないのに,耐性であることがわかったという報告がありました【1】.それから15年,アスペルギルスの世界ではアゾール耐性に関する研究が進歩しています.
 私が研修医になったころはアゾール耐性なんて言葉すらなかったと思うので,すごい時代になったもんだと感じました.
 アスペルギルス属では,CLSIで臨床的ブレイクポイントは設定されていません.その理由として,そもそも治療効果判定が難しかったり,PK/PDの臨床的相関性が不明であったりするためです.EUCASTはMICを公表していますが,CLSIはMICの代わりにepidemiological cut off values(ECVs)を設定しています.

長期使用によって耐性化

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