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呼吸器感染症よもやま話(8)

[第8回]呼吸器感染症に対するステロイドパルス療法は悪か

倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科

(初出:J-IDEO Vol.2 No.3 2018年5月 刊行)

ステロイドパルス療法という伝家の宝刀

 ステロイドパルス療法といえば,伝家の宝刀みたいな感じがして,研修医にとっては眩しく映る治療法かもしれません.この雑誌は「週刊少年ジャンプ」を目標に作られたと聞いているので,無理矢理『ドラゴンボール』にたとえるなら,ステロイドパルス療法は元気玉や大猿のような存在です.ここぞというときにしか使わない大技中の大技.ちなみにステロイドパルス療法を処方する指導医の心は,結構ヒヤヒヤものです.なぜなら,多くが崖っぷちの症例だからです.
 ちなみに,海外ではステロイドパルスという言葉はあまり使用されません.“high dose corticosteroids”などの表現を用いることが多いです.このステロイドパルス療法は,日本では慣例的に,メチルプレドニゾロン(ソル・メドロール®)500 mg 1日2回あるいは1,000 mg 1日1回点滴3日間というメニューを指します.海外ではメチルプレドニゾロンは1日あたり2 ,000 mgという高用量を投与することもあります.喘息発作に用いるメチルプレドニゾロンがせいぜい80~125 mg/日くらいだから,いかに大量のステロイドを投与しているかおわかりでしょう.ちなみに,メチルプレドニゾロンの1日量を500 mgに減じたものを「ミニパルス」,「ハーフパルス」なんて呼んでいる病院もあります(何を隠そう当院も).
 まず断言しておきたいのは,明らかな呼吸器感染症とわかっていてステロイドパルス療法を用いることはそう多くない,ということです.しかし,「呼吸器感染症かよくわからない進行性のすりガラス影」に対してステロイドパルス療法を用いることがあるんです.「よくわからない」ってどういことだよとヤジが飛ぶ前に,言い訳を書かせてください.


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