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微生物検査 危機一髪!(33)

[第33回]伝えることの難しさ

山本 剛 やまもと ごう
大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)
大阪大学医学部附属病院感染制御部

(初出:J-IDEO Vol.6 No.5 2022年9月 刊行)

相手に自分の考えを伝えることを難しいと考えている人はどの程度いるのでしょうか.また,何をどのように伝えるかでもその難易度には差があると思います.
 学生時代は横の繋がりが強く,自分の活動内容や趣向,目的が似ている人が近くにいることもあり,物事を伝える場合にはお互いの長所短所を理解した上で会話が進んでいったと思います.そのため,文章は成り立たなくても語彙を並べるだけで趣旨を伝えることができたと思います.一方,社会人ではどうでしょうか.横の繋がりより縦の繋がりが強く,幅広い年齢層と付き合っていかなければなりません.また,同じ組織であれば活動内容は同じですが,趣向や目的が異なる集団との付き合いが多くなるため,相手の立場になり丁寧に伝えなければ,伝えたものと異なった解釈をされていたり,そもそも伝わっていなかったりしてしまいます.自分がしっかりと伝えたと思っても,相手に伝わっていなければ言っていないのと同じになるかもしれません.また,伝え方も電話で伝えたり,面と向かって伝えたり,メールや文書を介して文字情報で伝えたりなど,相手の職制や職位,伝えたい内容の重要性,迅速性などから変化していきます.今回は,検査業務にまつわる情報伝達で気になる話をしたいと思います.

1.仕事に関する価値観の違い

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