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微生物検査危機一髪(39)

[第39回]グラム染色のよもやま話〜実践 グラム染色所見を用いた感染症診療〜


山本 剛 やまもと ごう
大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)
大阪大学医学部附属病院感染制御部

(初出:J-IDEO Vol.7 No.5 2023年9月 刊行)

 グラム染色は培養結果を待たなくても原因微生物の確認(推定)ができたり,材料が適切に採取されたものかどうかの確認を行うことができます.感染症であれば原因微生物を特定して,その微生物に対して適切な抗菌薬選択を可能とし,その結果で抗菌薬の投与期間が短縮したり,治療の失敗する機会を減らすこともできる検査です.しかし,それは1枚のスナップショットにしか過ぎないため,治療が上手くいかないケースも存在すると思われます.グラム染色所見を参考に選択された抗菌薬が本当に効果があったのか確認している施設は少ないと思います.
 大阪大学医学部附属病院では,グラム染色所見を参考に抗菌薬選択を決定している他,治療経過の確認や抗菌薬変更・中止・終了のタイミングについてグラム染色所見を参考にしながら検討する機会が多い病院です.今回は,架空の症例を提示しながらグラム染色所見をどのように活用しているかを紹介していきたいと思います.

1.グラム染色所見を用いた抗菌薬選択の基本

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