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呼吸器感染症よもやま話(5)

[第5回]非結核性抗酸菌症哀史

倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科

(初出:J-IDEO Vol.1 No.5 2017年11月 刊行)

私の外来に通院する中高年女性たち

 私の外来には若年から高齢者までいろいろな患者さんが通院しています.うん,そりゃあどんな医師でもそうだろう.では,みなさんの外来に通院している中高年女性を思い浮かべてください.どんな患者さんが多いですか? おしゃべりな患者さん,肥満の患者さん,いろいろな疾患をもった人がいるでしょう.
 しかし,呼吸器内科の場合,中高年女性というpopulationにしぼってイメージすると,その多くが気管支拡張症・非結核性抗酸菌症の患者さんであることに気づかされます.特に当院のように抗酸菌感染症を数多く診療している病院では,ほぼ全員これらの疾患であるといっても過言ではありません.
 気管支拡張症がある患者さんは,気道クリアランスが障害されていますから,満足に異物を体外へ排出することができません.そのため,緑膿菌や非結核性抗酸菌が気道にコロナイゼーションしてしまうのです.


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