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呼吸器感染症よもやま話(3)

[第3回]教え子が結核を紹介してきた

倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構中央胸部疾患センター内科

(初出:J-IDEO Vol.1 No.3 2017年7月 刊行)

 当院には結核病棟があるので,大阪中からたくさんの結核患者さんが紹介されてきます.特に罹患率が際立って高いことで有名な西成区からも,はるか南の堺市にある当院まで紹介されてくることがあります.そんな結核診療に慣れた病院ということもあって,近隣の研修医からは「結核診療を学べる病院」として名を馳せている……はずです.ええ,たぶん…….まぁ,そういうことにしておきましょう.
 私はこれまで数えきれないくらいの研修医を指導してきました.……言い過ぎました,12~13人くらいです.「教えてよかったなぁ」と感じるのは,やはり教え子が紹介状を書いてきたときです.みなさん,そういう経験はありませんか?
 5年以上前になりますが,ある医師が「胸部異常陰影」の患者さんを当院に紹介してきました.私が紹介外来担当医でその患者さんを診察したのですが,その医師の名前を見てテンションが上がりました.なぜなら,初期研修医の頃に彼をビシバシしごいた指導医が私だったからです.彼がイケメンだったから悔し紛れにしごいたというワケではありません,エエ.グラム染色のやり方を何度も教えて,彼の白衣は研修期間が終わるころにはペンキ屋さんみたいになっていました(染み込んだクリスタルバイオレットは洗濯してもとれなかったそうで).そんなノスタルジックな思いに浸りつつ,「あのコから紹介状が来るとはなぁ!」と紹介状の封を開けてみました.
 紹介状には,「腫瘤の周囲になんとなく娘病変がみられるので,結核ではないかと思うのですが……」と書かれていました.一見すると肺がんのようにも見えます[図1].しかし,確かになんとなーく,周囲に小さな粒状影(娘病変)があるような,ないような…….薄切スライスの胸部CTを撮ればすぐに解決するんですが,1週間程度の間隔で2回目の胸部CTを撮影するのは憚られたので,肺がんと結核の両方を考えながら検査を進めていくことにしました.

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