見出し画像

微生物検査 危機一髪!(1)

微生物検査 危機一髪!(1)
[第1回]本当に微生物検査は危機一髪!
山本 剛 やまもと ごう
西神戸医療センター臨床検査技術部


はじめまして微生物検査

 筆者は今まで感染症診療に携わってきた経験からこの企画のアイデアに辿り着いたのであるが,どうしてこのような企画なのか? このタイトルが持つ意味は何なのか? 読者はそんな疑問を持たれるかもしれない.
 臨床検査の多くは,身体所見や臨床所見からは判断できないが検査を行ってはじめて診断にアプローチできるというときに,「お,この検査結果は予想どおりだ」と自分を納得させるために行うのではないだろうか.結果については陽性や基準値以上(または以下)の数値を客観的に判断することで診断に繋げていくために使われることが一般的だと思う.しかし,微生物検査の結果は一筋縄ではいかない.それは,検出される微生物はすべて治療対象になる可能性を有しているが,実際にはすべてを治療対象としない場合も多く存在するからである.その上,系統別に羅列された抗生剤の一覧を確認しなければならないという難しさもある.当然のことながら,いつも自分が使用している抗生剤が希望通り結果に反映されて出てくることは少なく,抗生剤名を表す記号とMICを表す数値,それを繋ぐ等号・不等号が印字されているだけである.一体,この検査結果の本質はどう読み解けばいいのかとみな困惑しているに違いないと思う.「危機一髪で検査結果が」治療に反映されているケースを目の当たりにする機会が多いのである.
 また,微生物検査は一部自動化が進んでいるが,手作業が主体である.生化学や血液検査のように採血して,遠心処理後に自動機器に設置しボタンを押すと20分後には結果が出てくるような簡便なものではない.どれほど手の込んだ検査であっても,結果が診療で十分に活用されていないとしたら,悲しいものである.
 本連載では,そんな微生物検査を有効に活用するには,検査をどう依頼すればよいか,結果をどう解釈していくとよいのか,読者とともに復習する機会として,事例を交えながら解説していきたいと思う.

ここから先は

2,894字 / 4画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?