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呼吸器感染症よもやま話(14)

[第14回]緑膿菌の側撃雷

倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科

(初出:J-IDEO Vol.3 No.3 2019年5月 刊行)

拡張した気管支に棲む魔物

 私の外来にはたくさんの気管支拡張症の患者さんが来ます.無症状の患者さんから在宅酸素療法を適用されている患者さんまで,いろいろです.中高年,特に閉経後のやせ型の女性に多い気管支拡張症ですが,臨床転帰にもっとも影響を及ぼすのは下気道感染症です.

 長い戦いになるのが,非結核性抗酸菌症です.ほとんどがMycobacterium avium complex(MAC)ですが,Mycobacteroides abscessus complex※1に感染してあれよあれよと言う間に亡くなってしまうこともあります.

※1 昨年,Mycobacterium abscessus からMycobateroides abscessus に菌名が変わりました(菌株表示:ATCC19977TM)【1】.ゆえに,予後が良好な肺アブセッサス症として最近トピックのMycobacterium abscessus subsp. massilienseも,Mycobacteroides abscessus subsp. massiliense に変わりました.

 非結核性抗酸菌症に次いで,なかなか消えないのが緑膿菌です.特に,ムコイド型緑膿菌.大げさではなく,緑膿菌性肺炎のループに入り込んでしまっている患者さんもいます.私たち呼吸器内科医にとっては,コイツらは魔物以外の何物でもありません.


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