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呼吸器感染症よもやま話(27)

[第27回]薬剤性肺障害でしょうか? 感染症でしょうか?

倉原 優 くらはら ゆう
国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科

(初出:J-IDEO Vol.5 No.4 2021年7月 刊行)

呼吸器内科・感染症科に相談される感染症の鑑別

 私は呼吸器内科医かつ感染症科医であるため,他診療科からこんな相談を受けることがあります.
 「○○を投与している最中に,肺に陰影が出てきたのですが,これは薬剤性肺障害でしょうか? あるいは感染症でしょうか?」
 薬剤性肺障害である検査前確率がどのくらい高いかということに尽きますが,実はこの質問,回答が難しいです.これは「薬剤性肺障害が否定できない」という悪魔の証明に加えて,「感染症の診断のための気管支鏡検査の閾値が全国的に上がっている」という2つの問題点があります.

薬剤性肺障害が否定できない

 薬剤性肺障害の診断はきわめて哲学的です.日本呼吸器学会から薬剤性肺障害の診断基準[表1]が提唱されています【1,2】.診断基準の「1」と「2」は,ぶっちゃけると,なんでもアリなんです.広く使用されている抗菌薬や解熱鎮痛薬だけでなく,サプリメント・漢方薬,そして限られた集団に対する抗癌剤もだいたい肺障害の報告例があります.ただ,ある程度肺障害を「起こしやすい」薬剤というものが存在します.

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