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Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(11)

Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(11)
第11回 ICT(→AST)への臨床推論教育④
岸田直樹 きしだ なおき
感染症コンサルタント
北海道科学大学薬学部客員教授


はじめに

 前回は多職種に必要な感染症の臨床推論として,情報収集すべき具体的な項目に関して確認しました.適切な抗菌薬を選択するためにも,患者背景の情報をもれなく収集する必要があります.また,感染している臓器の特定のためにも,治療効果を的確に判断するためにも,臓器ごとの特異的なパラメータを意識した情報収集を行い,その情報からアセスメントすることが求められます.感染に関わるすべての職種がその情報をチェックする一人となり,適正使用を確認し,各職種の専門性の切り口から上手に介入していただければと思います.
 さて,今回は「ICT(→AST)への臨床推論教育」のまとめとして,「なぜ臨床推論が特に日本において必要か?」を考えてみたいと思います.国内で上手にASTを運営しているところでは,これを知らぬ間にやっているのですが,そこを解説します.以前にも述べましたが,臓器横断的に診療可能な感染症専門医がすべてを診ることができればそれでよいのかもしれません.しかし,いまもそしてこれからもそのような感染症医が潤沢にいるという施設は多くはないままでしょう.耐性菌を減らす戦略は感染対策からASTへのフェーズに移行しつつあり,抗菌薬適正使用への介入は急務の課題です.感染症専門医に限らず,薬剤師,看護師,検査技師がそれぞれの専門性を活かしつつ,臨床推論を駆使して多方面から抗菌薬適正使用に介入することが求められています.


なぜ臨床推論が大切か? 日本の医療の現状と
日本の特徴から見えてくるもの

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