1.1倍複勝転がしをするのは馬鹿というお話

巷では複勝転がしなどというものに精を出している頭のおかしい人たちがいるらしい。

こういうみたいなYouTuberももよく見かける。


こんなものを動画にして、世間に醜態を晒して、恥ずかしくないのか?と思う。


私は、間違っても、こんな阿呆にはなりたくないし、皆さんもこんな阿呆にはなってほしくない。


なので、今日はなぜ1.1倍の複勝転がしが馬鹿なのかという話をしようと思う。




で、複勝転がしが頭の悪い賭け方というのは、感覚的には皆さん、理解できるのではないだろうか?

「勝ち続けることはできないのに、1回負けたら全てを失う。」

「負けは小さく、勝ちは大きくというギャンブルの原則に逆行している」


あたりは、複勝転がしに対して、よく言われる指摘であり、実際これは正しい。



が、複勝転がし愛好家はアホなので納得できない。

「負けるのが良くないだけで、最後まで勝てば問題ない」

「確かに勝ち続ける確率は低いが、勝ち続けることができればその分リターンは大きいので、ハイリスクハイリターンなだけだ」

などといった反論をする。


というわけで、今日はみなさんが大好きな期待値という観点から複勝転がしについて考えてみよう。

これは当たり前の考察であるはずだが、意外に盲点になっている。


では早速計算に移る。

複勝1.1倍の複勝率は約76%なので、それを元に、1万円を10回複勝ベタ買いした時と、10万円から複勝転がしした時で期待値を計算してみる。


■ベタ買いで購入した場合

1回の馬券購入では、76%の確率で1.1倍が当たるので期待値は0.836(1.1×0.76)となる。

なお10回買ってもこの数字は変わらない。

1回1万円で10回買うと、10万円の投資で83,600円返ってくる計算になる。

とりあえず、0.836というこの数字を覚えておこう


■複勝転がしで購入した場合

次に複勝転がしで10回転がすことを考えてみる。

まず1回の転がしが成功する確率は76%であり、その場合1.1倍になる。

続いて2回の転がしが成功する確率は76%×76%の57.8%であり、その場合1.1×1.1で1.21倍になる。

これを10回繰り返していくと、76%の10乗の確率で成功し、その場合1.1の10乗ほどに金額が増えていることとなる。

で、計算してみると、76%の10乗は6.42%であり、1.1の10乗は2.59である。

つまり6.42%の確率で2.59倍にできて、93.58%の確率でお金が全額失われるのであり、期待値は0.166となる。

ベタ買いの0.836と比較して、0.166と大きく期待値を損なっていることが理解できるだろう。


こんなギャンブル、あほの極みである。



しかもこれは1.1倍を10回転がすことを想定したシミュレーションである。


1万円を100万円にするためには49回転がさなければならない。



この場合の期待値は、0.000154となる。


つまり1万円スタートの場合、約1円のリターンしか期待できないということなのだ。


1円て!!!



もはや1万円捨ててるのと同義である。


アホとかのレベルを超えて、狂気しか感じない。


これが複勝転がしのウンコなところである。



複勝転がしは、「指数関数的」に損失を拡大する賭け方なのだ。


このことをまずは理解してほしい。


で、勘の良い方だったら、それは1回1回の期待値が1に満たないから(前回のシユレーションでは0.836)、大きな損失に繋がっているだけで、1回1回の期待値が1を超えてたら複勝転がしは素敵な賭け方なんじゃないかと考えるかもしれない。


これは正しい。


例えば、あなたが複勝1.1倍の馬を95%の確率で当てれるとしよう。その場合、1回賭けるだけなら期待値は1.045となる。

で、これを先ほどと同様に49回転がすと、期待値は8.643となる。

期待値8.643ということは、1万円スタートで100万円を目指す1.1倍複勝転がしは、1万円の参加費でジャンケンに勝ったら16万円上げるよというギャンブルをしているのと同じことなのだ。


なんという錬金術。



つまり、期待値がプラスの場合は、複勝転がしは指数関数的に増加するので、悪い賭け方とは言えなくなるのである。

ただ成功確率は高くないので(100回やって成功は8回程度)、破産確率を考えると、複勝転がしが必ずしも正当化されるわけではない。そこらへんに興味がある方は「バルサラの破産確率」で検索してみると良い。まあ期待値8とかになるならやった方がいいと思うけどね。


というわけで、複勝転がしをする上では、1回、1回の期待値がプラスかマイナスかというのがめちゃくちゃ重要になることはご理解いただけたのではないだろうか?


そこまで理解いただいたら、次の話に移ろう。


それが、複勝1.1倍にて期待値プラスの賭けをすることは可能なのか?というお題である。


この話をするためには競馬の控除率というものを考えなければならない。


控除率とは、JRAが賭け金から運営費として抜く手数料みたいなものだ。


馬券種によるが、20〜25%が寺銭としてJRAに徴収され、我々は残りの75%〜80%のお金をめぐって、他の競馬ファンと醜い争奪戦を繰り広げているわけだ。

で、この控除率約20~25%というのが数字の見た目以上にエグい数字であることを多くの競馬ファンは気づいていない。

私がよく例え話として使うのが、下記のトランプゲームである。

・2、3、4、5、6、7、8、9、T、J、Q、K、Aの13枚のカードがある
・ここから1枚を引いて、T、J、Q、K、Aが出たら賭け金の2倍が貰える
・逆に2、3、4、5、6、7、8、9を引いたら賭け金は没収される
・つまり当たりは5枚、外れは8枚

こんなギャンブルがあった時に、あなたは手を出すだろうか?


当たりを引いても2倍にしかならないのに、当たりが5枚
外れが8枚ってどんだけ理不尽なんだと思わないだろうか?

ジャイアンでもこんな理不尽をのび太に強要しないことだろう。


でも、このギャンブルの期待値は0.77である。



つまり競馬と同等なのだ。



JRAの理不尽さをご理解いただけただろうか?


もう競馬やってるだけでバカというレベルである。



そもそもの設定がこんな理不尽な競馬というギャンブルにおいて、「期待値が1を超える勝負をする」というのは、簡単なことではない。


どこか別の馬が過剰に人気を吸い取ってくれる必要があるし、狙っている馬が大衆に気づかれてもいけない。(大衆とは逆の方向に行って、初めてオッズ妙味が出る。大衆と同じ方向に行く限り控除率の壁は超えられない。そんな世界である)

ちなみに本来なら単勝5倍の馬が、控除率分の人気を吸い取ろうと思ったら、単勝2.5倍とかにならないといけない。それくらいの過剰人気馬が現れて、初めて他の馬に妙味が出てくるのである。


で、複勝1.1倍の馬について考えてみよう。


基本的に1.1倍になるような馬って、過剰に人気している馬だし、大衆に気づかれている馬である。


つまりオッズ妙味が出ないという条件をドンピシャで満たしている


こんな条件のもと、理由もなく、自分だけは複勝1.1倍の馬で期待値1を超える勝負ができると考えるのは、知性が欠如している楽天的としか言いようがない。


個人的に唯一あり得そうだと思う戦略は、①JRA+10を利用し、更に、②1.0倍は嫌だという大衆心理に逆行する、つまり1.0~1.1を積極的に狙っていくというものである。が、これを利用したとしても、私のシミュレーションでは、1回あたりの期待値は甘く見積もっても、0.96くらいにしかならない。

つまり、49回転がそうとすると、期待値は0.13とかになるので、正常な精神と知性を兼ね備えてる方なら回避して然るべき賭けである。

なお、複勝オッズが1.0~1.1の時に1.1倍つく確率は40%以下である。多くの場合は元返しになるので、1.0~1.1に果敢に賭けていくのは常人の神経では難しい。


なので、多くの方が複勝転がしにチャレンジしては玉砕しているが、それはあなたの予想が悪いからではない。

そもそも原理的に不可能に近いことにチャレンジしているからなのだ。


今後もチャレンジするかは個人の自由だが、できればそのチャレンジ精神は、複勝転がしなんかに向けるのではなく、違う所に向けていただいた方が社会のためではあるだろう。


以上で、1.1倍複勝転がしは馬鹿というお話を終えようと思う。

これを読まれた方が、複勝転がしのアホさに気づいて、複勝転がしなんぞに手を出さないことを祈ってやまない


お金はドブに捨ててはいけないし、人間は賢く生きなければならないのだ。


そのことを強く心に刻んでほしい。


というわけで、私は来週から複勝転がしをやります。


みんな、応援してね\(^o^)/




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