クウェート留学講義5「クウェート文化とイスラーム文化」

私がクウェートに来て間もない時、とあるクウェート人は言いました。

「クウェートには2種類の文化がある。イスラーム文化と、クウェート土着の文化だ。だから、クウェートで異文化に触れたとき、それがどちらなのか、またはどちらもなのか、判断しないといけない。」

クウェートなど、中東へ留学する人の多くは「イスラーム文化」を見に来ます。

しかし、それのみを前提とした色眼鏡で見ると、土着の特有文化も、「イスラーム文化」に見えてしまいます。


【クウェート内のイスラーム文化】

クウェート留学講義2「イスラームの根幹」で挙げましたが、基本的にイスラーム文化に関しては、クルアーンとハディースに基づいています。

そのため、「イスラームについて興味がある」ということを言えば、イスラームに関する文化は、聖典クルアーンや言行録ハディースを引用して教えてくれることが多いです。

イスラーム社会は、クルアーンやハディースを基にしたイスラーム法学によって成り立ってきたため、クルアーン、ハディースを引用することで相手に納得してもらう手法が今でもよく用いられます。

例えば、タクシードライバーと交渉してメーターを使ってもらう事になったとき、

私:「メーターを使ってくれてありがとう。ここはぼったくりが多いから困るんだ」

ドライバー:「当然のことだよ。神の前では自身の行動に嘘をつけないんだ。神は仰せになった「…~~…」

と、イスラームでどのように言われているか教えてくれます。


クウェートは、イギリスに占領されていた過去があるため、西洋的な世俗法で統治されています。

しかし、統治に関係しない事項は、変更する必要がなかったのでイスラーム法のまま残っています。

例えば、家族法。離婚のルールや婚姻のルールはイスラーム法のまま残っています。

離婚の権利は男性が持っていますが、婚姻時の条件提示の権利は女性が持っている、といった具合です。

男性は、3回タラークと言ったら離婚ができますし、女性は婚姻条件に「離婚時は毎月~万支払うこと」と条件を入れれば、男性はそれを履行しなければいけません。


【クウェート文化】

イスラーム文化をある程度把握して初めてクウェート文化も見えてきます。

クウェート人に「これはイスラーム文化か、クウェート文化か」と聞いてしまうのもよいと思います。

例えば、クウェートにある「奢りの文化」は、イスラーム文化+クウェート文化です。

ほかの中東諸国でも、客人をもてなす文化はあります(これはイスラーム文化です)。ただ、奢る行為自体はクウェート特有の豊かさから来ていると思います。

他にも、男性が行うお茶会「ディーワーニーヤ」はクウェート特有の文化ですし、「ワスタ」と呼ばれる、いわゆるコネは、中東の部族権威社会から来ています。「~(偉い人)ってやつと友達なんだけど」と言えば、様々な手続きを優先的にしてもらえたり、そのコネの恩恵を受けられます。


【ミックス文化】

先ほど、奢りの文化に関して、客人をもてなす文化はイスラーム文化、奢る行為自体はクウェート文化、と言いました。

このように、イスラーム文化とクウェート文化がミックスされた文化もあります。

その最たるものが、男女を分ける文化です。
クウェート大学では、カフェテリアから授業、図書館まで全て男女分けています。

言行録ハディースにはこのようにあります。
「それ、シャイターンが3人目となることなしには、男と女が2人きりになることはないのだぞ。」(アッ=ティルミズィー2165)

しかし、クウェート大学の教授Sheikha al-Jassem先生は「クウェート大学が男女を分けているのは、あくまでクウェート独自の文化であって、クルアーンとは関係ない」と述べています。

この方は後にクウェートの憲法はコーラン・イスラーム法よりも上位にあるべきと主張して、クウェートの検察に召喚されています。

このように、クウェート文化、イスラーム文化、そのミックスとあるように、クウェートのみならずイスラーム圏の文化に関しては見極めが必要になります。

ハラール認証も、実は中東じゃなくて東南アジア発祥です。あれは、華僑など、ムスリム以外の人と暮らす多様性社会の中で生まれた一種のアイデンティティーの表現方法でもあります。ハラール認証文化は、後にグローバル化を背景に中東にも輸入されました。

土着文化、イスラーム文化の見極めをすると、中東理解がもっと面白くなると思います。


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