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『許されようとは思いません:芦沢央』を読んだ

○読む前
Kindleからのおすすめで。表紙の彼岸花たちが不穏な雰囲気出してるなあ。短編集か。

○目撃者はいなかった
・営業成績が急に伸びた。試算していた額よりもはるかに大きい。何故。

・入力ミスで誤発注になっていたことに気づく。褒めてくれた上司に顔が立たない。正直に言い出せず隠し通す策を練る。

・なんとか誤魔化して帰る間際に、事故を目撃してしまう。

・「死とはドラマや映画、あるいはニュースにしか出てこない自分とはかけはなれたもの」か。その感覚わかるなあ。

・自分が目撃したこととは異なる内容で新聞が出ている。生きている者が有利になる発言をしたのか。

・警察に行くということは自分がしていたことを話すこと。それに証言することで生きている人が生きにくくなるくらいならと自分を言い聞かせる。

・亡くなった運転手の妻が訪ねてきた。夫は絶対に破ることができないジンクスをいくつも持っていて赤信号で止まることもその一つだという。運送会社から話を聞いて納品数や場所の矛盾に気づいた。目撃者だとバレてしまった。

・不審火の件で警察が来た。誰かが自分を見たというがその時は自分の不始末をなんとかしようお別の場所にいたのに。

・運転手の妻か…!自分のためにしか証言できないのなら話さざるをえないように仕向けたんだ。賢すぎるし、手口が狡猾だ。

・どちらを選んだのだろう。どちらを選んでも地獄だし再起不能な気がする。実直に生きようと思った。

○ありがとう、ばあば
・9歳の杏ちゃんがバルコニーの扉を閉めてしまい、寒い夜なのに閉め出されてしまった

・やっていいことと悪いことがあるでしょう。と聞いたら、いいことだと言う杏ちゃん。

・ホテル7階のバルコニーに出たのは、名刺が風に飛ばされてしまったから。そこまで予測しての振る舞い?

・回想。年賀状の家族写真の杏の写真写りが気に食わないばあば。撮り直そうという。

・子役デビューまで果たした美しい孫。辛いダイエットをさせてきたのはばあば。健康的になったのはいいけれど。子役として働きたいのは本当に杏の本心?

・ミュージカルで活躍した美月に惹かれて、美月ちゃんみたいになりたいと言っているのか。

・子役としての成功を強く思うあまり、杏の子供らしさを奪い続けている気がする。フライドチキンも食べられないし、学校にも行けない。

・杏が、死んだ金魚をトイレに流してしまった。死というものが理解できていなくても不思議はありませんしと担任は言うが

・ばあばが死んでくれたら、年賀状出さなくてよくなるんだよね。ばあばも写りが良くないやつは出さない方がいいって言ってたもんな。いいことだわ。

・純粋さ故に恐ろしい

・杏自身の本心がほぼ見えなかったなあ。美月のようになりたいくらいしかなかったね

・ばあばに対しての感情はなにか抱いていないのか?無?

○絵の中の男
・朝宮二月先生の絵を鑑定する人、それを買う人がいる

・燃え盛る炎の中心で苦悶の叫びを上げている幼子、首から大量の血を噴き出している男、その二人の前で呆然と立ち尽く立ち尽くす生皮を剝がれた女。それらをモチーフにした絵が最も高値がついたらしい。今回持ち込まれたものは贋作だった。

・その絵は強盗殺人をきっかけに行方知らずに。

・あの絵が描かれることになったきっかけの事件。鑑定士も現場にいた。先生と夫:恭一が争っていた。先生が恭一に匕首で斬りかかる形で首を裂いた。お願い、許してと先生。

・行方をくらまし3日後に逮捕された。発見された場所には3枚の百号の大きい画布。あらかじめ運んであった=計画的犯行?夫の死に様を絵にしている。

・贋作と言っていたのにやはり買いたいという。経緯を語り始める。

・鑑定士は昔家政婦として働いていたことがあり
そこの主人に展覧会へ連れて行ってもらい、絵について教えてもらっていた。

・展覧会では目玉の作品で最も鑑賞者の気持ちが盛り上がるよう、陳列構成や照明の当て方、順路や空間の取り方などが工夫されているものらしい。美術館行きたくなるね。

・二月先生の絵は一言で言えば、その絵はグロテスク。主人は好きだというが、鑑定士は嫌いだった。でも気になってしまう。人から言葉を奪う絵。生皮を剝がれたような肌の質感が、分厚い油絵の具の盛り上がりで表現されている。

・家政婦を辞め、蜷山画廊に行ってみるかと主人は言う。しかも新しい主人は二月先生だという。

・先生は出産してからスランプ。

・先生が七歳の頃にご両親とお姉様が亡くなられる事件があった。幼少期の記憶が作品に反映されているのかも。犯人は匕首を手にした覆面の男。なぜ先生だけ生かした?

・長男の猛くんを産んで、幸せになったからスランプになったのであれば、もう描けないままのほうが喜ばしいような気もしてきた。

・恭一も画家、今で言うイラストレーターのような職業。先生に引け目があったのかも。

・猛くんも火事で亡くしてしまった。その後にまた絵を描けるようになったがどれも地獄絵。

・二月先生の絵を高額を注ぎ込んででも手に入れようとする人は、大抵先の戦争で親しい人を亡くされたという方ばかりでした…自分への罰とでも思っているのだろうか。

・猛くんを失ってから、先生、恭一、鑑定士の関係性が崩れていく。やり場のない怒りや後悔の念。

・絵筆を握りしめたまま画布の前で立ち尽くす先生を恭一様は罵り、おまえはたった三年で猛の死から立ち直るのか。おまえにとって猛はその程度の存在だったのか。と言う。そんなわけないのに。

・描けない=不幸を乗り越えた

・先生は恭一が首を裂くのを止めようとしていたのではと推察される。自分を殺してもらって、モチーフにしてもらい、絵の中で生きることを選択したのか。

・先生はたった一作で恭一の死を消費してしまった。もう描けなかった。先生にとっては、絵が描けないのを責められることは、殺人犯として責められるよりも恐ろしいことだった。

・刑務所にいる間は油絵を描くことはできない=かけなくても責められない だから裁判でも証言しなかったのか。

・読み終わった後、心がずっしり重たくなった。誰も幸せになれないねえ。

○姉のように
・3歳女児虐待死 母「相談できる相手がいなかった」

・よくニュースで見るよね。よく見ちゃいけないことだけど、起こってしまいがち。

・母親である菜穂子の妹夫婦の会話が始まる。謁見に行ってもごめんなさいと繰り返すばかり。

・妹には会いたくないと言っているらしい。なんで。なんで悩みを話してくれなかったのか。

・『マフィンおばさんのぱんや』という絵本を姉に読んでもらった思い出。実際にパンを作ったけど、キッチンは惨状。2人は満足そうだ。憧れたものを作るのはワクワクするね。

・嫁いだ先が福岡と長崎で離れていたから、頻繁に会えなかったが、電話では毎週のように話していたし、三カ月に一度はお互いの家に行って会っていた。穏やかで余裕がありそうな姿から、今回の事件は想像できない。

・妹のほうは子育て大変そう。

・事件の一報を聞いて、夫が、姉の裏切りで酷い話だと言う。はあ?

・絵本作家で、育児熱心な姉。事件後周りからは批難の嵐。熱心なのはそんなにダメなこと?ネットで個人情報拡散された。写真にも悪口がついた。

・姉も心配だが、自分達も周りから避けられるかもと不安に思う。明らかに差別されることはなかったが。でも妹が他の赤ちゃんを抱いた時だけ泣かれるとかお財布がないの一言でこちらを見てくるとか、潜在的に意識してんだろうな。

・市のママサークルで子どもを経由して知り合った友達では、本心を打ち明けられない?実家に戻ることに。

・実家の母の手首には数珠状のブレスレットがびっしりと肌を覆うように巻きついていた。御札、熊手やお守りが、至るところに置かれている。宗教だ!

・娘に食べさせた焼きそばパンの袋をゴミ箱の下に押し込んで隠し、ディズニーの英語教育DVDを流しながら大急ぎで豚の生姜焼きを作った。誰の為の行動?娘?夫?それとも自分?

・イヤイヤ期の娘の応対に悩む。神経質な母だと子は不幸?ついに手を上げてしまった。繰り返すようになってしまった。そして殺してしまった。

・供述で、いつか、姉のようになってしまうんじゃないか。姉のように、人の信頼を裏切り、自分と家族の人生を滅茶苦茶にしてしまうんじゃないかと話す。被害妄想だと警察は言うが。誰にも相談しなかったわけではないし、助けを求めていたと思うんだけどな。

・姉が虐待死させたと思い込んでいたが、本当は妹だったのか。窃盗で捕まった姉の記事が出て、この話が始まったのか。

○許されようとは思いません
・電車でこの檜垣村を訪れる諒一と水絵。幼い頃は父の運転する車で祖母の家に来ていた。山の景色が深緑色、若草色、苔色、鶯色、松葉色、老竹色、濃淡様々な緑がモザイク模様を描く。

・「夏、田舎、線路」という組み合わせから、少年たちが線路伝いに歩いて死体を探しに行く名作映画を連想していた。スタンドバイミーか。知ってるけど見たことないな。

・2人が交際を始めてから今年で四年。結婚を考える時期。踏み切らない理由は、諒一の祖母が殺人犯だったから。水絵もそれを知っているけれど。

・腕の中の祖母の骨壺が…なぜ持っている

・祖母との思い出の回想。優しい祖母。父方とは違い、たくさん甘やかしてくれた。テレビにぶつかって壊しても、優しい嘘をついて許してくれた。

・母の迎えが来ず、バスを使う。目的地を運転手に尋ねたら、乗客がこちらにかなり注目してきた。田舎って噂話大好きだもんな。

・石像の道祖神、サカイ様。境界の内側にさえ禍が入ってこなければいい。よそ者を締め出して結束を強めていく村人の姿勢と重なる。

・子供の頃夏祭りに行った。村人はいろいろ貰えるのに諒一は貰えない。祖母は村八分にあっていたのか。諒一にとっての曾祖父の存在のせいだという。曾祖父が認知症なのはしょうがない、しっかり管理していない祖母のせいだと言われる。外から来た者だから。いつよそ者じゃなくなるのか。

・祖母よりも、最も悲惨な暮らしを強いられていたのは野路家。一度村を捨てた妻への風当たりは強く、よそ者である入婿と子への仕打ちはそれ以上。入婿は隣人を殴り殺すという事件を起こした。村八分ではなく村十分へ。

・また曽祖父が水門をいたずらに開けた。『小沼のやつ、泡食ってたろう』意図してしていたことだとわかる。気がつくと、曾祖父の腹部に包丁を突き立てていた。服役中に病死した祖母。骨になっても村十分の扱いを受ける。墓を掘り起こされた。

・もう18年経ち、村十分をしていた人たちも代替わりしただろうから、改めて墓におさめてあげたいという思いでやってきた二人。

・祖母は曾祖父と同じ墓に入らないために村十分になりたかった。実家の墓にも入れない。村八分をするような村の墓に入りたくなかった。死後の世界を信じる祖母としては、終わらない苦しみだったのかもしれない。祖母の本当の想いを知り、納骨をやめようと考え始めた。

○読んだ後
人間が一番怖い。自分を守るためなら誰かを犠牲にできる。自分の望みのためなら誰かが苦しんでいるのも厭わない。どの話も人間の恐ろしさを背景とし、オチでトドメの一撃を強く深く刺してくるようだった。

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