見出し画像

『RRR』感想

昨年から「3時間の上映時間があっという間に感じるくらい面白い」
と話題になっていたインド映画『RRR』。

地域の映画館で上映しておらず、
レンタル開始でようやく観ることができた。

(今回も記事もネタバレがあるため
これから観る予定の方はここでページを閉じて
もしよければ観終わってから戻ってきてください)


あらすじ

舞台はイギリス植民地下のインド。
英国人がインド人を物のようにいたぶり
幼い娘を誘拐同然に連れ去ってしまうという
ショッキングなシーンから始まる。

主人公の一人「ビーマ」はさらわれた村の娘を取り戻そうとする。
もう一人の主人公「ラーマ」は
ある目的のためにあえて英国側の警察官に身をやつして
反乱分子を取り締まっている。

そんな二人が偶然出会って意気投合し親友になるが、
お互いの使命が衝突し、二人の仲が引き裂かれてしまう…という展開。

主人公たちのモチーフ

相棒ものというと、
一人が肉体派ならもう一人は頭脳派というのが
バランスがとれてよいかと思うけれど、
今回はどちらも筋肉もりもりで画面がたいへん暑苦しい(褒めています)。

ラーマはたった一人で警棒片手に数百人の怒れる民衆を制圧するし、
ビーマはというと、虎を素手で絞めてた(笑)

名前はいずれも実在したインド独立革命家の名前
「ラーマ・ラージュ」と「コムラム・ビーム」からつけられたとのこと。
この二人は実際には一緒に活動したことはないそうなのだけれど、
もし二人が出会って共に闘っていたら…という「if」の物語でもあるそう。

また、インドの叙事詩『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ』から
人気の高い英雄たちのイメージも盛り込まれている。

『ラーマーヤナ』から、
ラーマには、ヴィシュヌ神の化身である「ラーマ王子」のイメージを、
ビーマには、ラーマ王子を助ける猿族の戦士「ハヌマーン」のイメージが
付与されている。

映画の中でラーマが四頭だての白馬の馬車で領事館に突っ込んでくる
というシーンがあり、
「絵的にめっちゃかっこいいけどなぜ馬車?」と思っていたら
伝説の英雄ラーマ王子の戦闘イメージそのものなんだとか。

ハヌマーンは孫悟空の元ネタともいわれており、
ラーマ王子の弟のために薬草を山まるごと運んでくるという
豪快なんだか何なんだかという逸話の持ち主。
映画の中では、傷を負ったラーマを手当てするシーンで
せっせと薬草を(適量)処方するというエピソードがある。

『マハーバーラタ』から、
ラーマは、弓矢の名手である「アルジュナ」という英雄のイメージを、
ビーマは、その兄で怪力豪快な「ビーマ」という英雄のイメージを
付与されている。

アルジュナは神の弓「ガンディーバ」で戦い、
矢が尽きない矢筒を持っていると言われている。
映画の終盤、英国軍と戦う際に、
炎の中から弓矢を携えてラーマが現れるというシーンがあり、
「絵的にめっちゃかっこいいけどなぜ弓矢?」
(イギリス側はピストルとか大砲とか撃ってきてるのに)
と思っていたけれど、
インドの方はこの映像を観た瞬間、
「アルジュナ来たァァァーーーーーー!!!!!」と
勝利を確信するんだと思う。

『マハーバーラタ』のビーマは、棍棒使いで動物とも仲良しということで、
映画の中では、少人数で領事館を攻め落とすために
トラックに野生動物を詰め込んでして車ごと突っ込み、
動物たちと一緒にビーマが飛び出してくるというシーンがある。
(この映像にハマってYouTubeでリピートした)

歴史上の偉人と、神々や英雄のモチーフを特盛りにした人物造形で
映画の中にはこのほかにもたくさんのモチーフがちりばめられており、
インドの方やインド文化に詳しい方は
場面ごとにテンション爆上がり、
ときめきが止まらないという感じになるのだそう。

日本版『RRR』を作るなら…

もし日本版『RRR』を作るならという妄想をしてみるなら、
「織田信長」という名前の青年と、
「坂本龍馬」という名前の青年が出会い熱い友情を育み、
やがて強大な敵に打ち勝つという展開はどうだろう。

主人公それぞれに
ヤマトタケルとオオクニヌシの神話的な要素を加えたり、
宮本武蔵と安倍晴明要素を加えたような感じだと、
バトルシーンが盛り上がりそう。

それぞれの人に推し神・偉人・英雄がいると思うから、
誰のどの要素を盛り込むかでお酒の席でディスカッションしたら楽しそう。

ただ敵は、実在の国だと、色々とさわりがあるから、
エイリアンの襲来とかにするしかないのかな…。
(あ、これだと『銀魂』になっちゃう?)

個人的には、文化・芸術でマウントを取ってくる敵に対して
運慶&葛飾北斎のペアでアートバトルしてほしい。
彫ったり描いたりした生物が、生きて動き回るような場面を観たい。

インド映画あれこれ

私が通っていた大学で、
世界の映画を観るという講座があり
(観て感想書くだけなので単位はもらえない講座だったけれど)
そこで何本かインド映画を観せてもらったことがある。

そのときに、
インドでは映画が庶民の娯楽の中心に位置していて、
家族みんなで観にいき、幕間にご飯を食べたりして
楽しんでいるのだと教わった。
だからインド映画は3時間越えで途中に休憩が入る。

必ず群舞、パーティー(結婚式)、歌唱シーン
が盛り込まれるのも特徴。
インド映画の歌声はどれを聞いてもなんだか似ていると感じるけれど
その理由は、俳優さん本人ではなく
歌唱専門職の人が歌うというケースが多いためだそう。

北インド系と南インド系でイケメンの傾向が違うというものおもしろい。
北インド系は織田裕二さんを濃くしたような感じで、髭なしの人が多い。
一方、南インド系(『RRR』がそう)は、がっつり濃いめの髭男子。

娯楽とはいえ、
社会風刺、民族・国際問題など
時事的でシリアスなテーマも扱ったりすることもある。

今回の映画は愛国的な面が強かったようにも感じる。
エンディングでは革命時の偉人たちを讃えていたし。
こんな風に自分の国の神話や偉人たちを純粋にリスペクトして
映画にできちゃうというのがうらやましい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?