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抽象思考と具体思考

今、『宇宙思考』という本の紹介をしようと準備しています。
著者はBossBさんという日本の女性の天文物理学者さんです。

「BossB」というのはニックネームで
Bossは「自分の人生のボス」という意味で
Bはビッチという意味だそうです。
日本語訳だとあばずれ女などになるかと思います。
(海外ドラマを見ていてこの単語が出てきたらピー音がかかります)
本来良くない意味の言葉ですが
BossBさんにとってはこの言葉は
「従来の男性原理主義的な価値観から見たら
 "ビッチ"と呼ばれるような生き方をする」
という意味だそうで
めちゃくちゃかっこいい女性だなと思います。

見た目はヤンキーっぽいというかギャルっぽく
YouTubeでおすすめ動画に上がってきてこの方を知ったのですが
こんな女性がいたなんて知らなかったです。

『宇宙思考』は難解な天文物理学に関して
面白く親しみやすく分かりやすく書かれています。
学術書だったら一行読むだけで気を失うレベルの
難解さだと思うんですけれども
それをかみ砕いて書いてくださっています。

私は宇宙に興味があって
目次を読んでいるだけでもワクワクしてしまいました。
例としてあげますと
四次元時空とは何か
ブラックホールの中に入ったものはどこにあるか
人間はあとどれくらい地球に住んでいられるか
パラレルワールドはあるか
タイムトラベルできるか…などでです。

すごく興味を持って読み進めているのですが
全く頭がついていかないというものもありました。
自分の言葉で要約しようとしても
本当に理解していないと要約できないので
動画に盛り込めたのは本書の中のほんの一部で
先ほど読み上げたような目次の内容というものは
私の力量不足で盛り込むことはできませんでした。

そういえば高校生の頃
物理が赤点しか取れなくて補講でなんとか乗り切ったけど
本当に辛かったなということを思い出しました。
決してサボっているわけじゃないのに
テストがほとんど白紙でしか出せないということもありました。
物理ほどではありませんが
理系科目には非常に泣かされました。

どうして物理、理系分野を
うまく理解できないんだろうと考えてみたところ
私は五感あるいは過去の経験から分かるものしか分からないんだ
ということを感じました。

例えば『宇宙思考』の本の中に
ブラックホールの説明が出てきます。

ブラックホールの入り口にはとある境界線があり
そこを越えたら光さえも外に出ることができないとのことです。
このことから「ブラックホールに吸い込まれる」
という言い回しをされるのですが
実際吸い込まれていくわけではないとのことです。

時空の歪みつまり重力が大きければ大きいほど
時間がゆっくりと進むとのことです。
ブラックホールの入り口は極端に時空が歪んでいるため
入り口に近づけば近づくほど時間がどんどんゆっくりになり
外から見ているとまるで
時間が止まっているかのように見えるそうです。
そして極限まで時間が遅くなった結果
消失して見えるとのことです。
こうして外側から
ブラックホールの内側にアクセス不可能になるとのことでした。

私は時空の歪みというのも
その結果時間が遅くなるということも
体験したことがないので全く理解できないし
想像できないし読んでて分かるようで分からない
という状態になってしまいました。

思考の傾向として抽象思考が強い人間と
具体思考が強い人間とがいると言われていますが
私は圧倒的に具体思考型なんだろうなと感じます。

よく理系・文系という区分けがありますが
理系の方というのは総じて抽象思考が得意なように感じます。
「抽象思考」という言葉をネットで調べてみると
「事物の共通点に着目し一般的な概念で捉えること」
と説明されていました。

「要するに○○」というような言葉に象徴され
抽象思考は問題解決思考とも
言い換えることができるのではないかなと感じます。

抽象思考の例としてよく
ヘンリー・フォードの例が出てきます。
フォードはフォード社を創設し自家用車を普及させた人物です。
当時、移動手段は馬車の時代でした。
皆から意見を聞いたら
「もっといい商品を作りたければ
 6頭だての馬車にしてみたらどうだろう
 いやいや8頭だての馬車にしてみたらどうだろう」
というふうに馬が増えていくだけでした。

しかしフォードは
「要するに皆、早く目的地に着きたいというニーズがあるのだ」
ということに着目しました。
そこで自動車という新しい手段を思いついたということです。

「失敗学」という学問があります。
これは事故や失敗が発生した原因を解明し
将来経済的な打撃をもたらしたり
人命に関わるような重大な事故や失敗が起こることを
未然に防ぐための方法を追求する学問です。

この失敗学の第一人者である畑村さんの講座に
参加させていただいたことがあります。
畑村さんは抽象化のことを「山に登る」という言い方をされていました。
山に登るように視点を高い位置に移動させて
そこから解決策を導き出すとのことです。

例えば医療現場でのあわやという出来事
お薬の配布間違いがあったとします。
これはベッドから離れて食堂にいたお年寄りAさんに
間違えてBさんの薬を渡してしまい
慌てて取り返したがあわや医療事故になるところだったという事象です。

この問題に対してそのまま対応しようとすると
「薬を渡すときはちゃんと確認しましょう」ということになるのですが
これだと他の分野に応用が効かないということになります。
医療現場においても他の場面
あるいは業種が変わってしまったら
この貴重な失敗と学びの経験というのは
使えないものになってしまいます。

失敗学ではまず抽象度を上げていくということをするそうです。
本人がベッドから離れて食堂にいたということについて
「本人と、本人を示す名札とが離れていたために起きたことだ」
というふうに考えます。
そしてさらに
「本体と、ラベルが離れていたために起きたことだ」というように
どんどん抽象度を上げていきます。

こうすることで他の分野にも応用できるようになります。
本体とラベルがバラバラになった結果紐付けができなくなるというのは
医療現場はもちろん通常の会社業務でも起きることだからです。

抽象思考は頭の中で
概念(手に取ったり目で見たりできないようなもの)を
巡らせ、構築し、問いを立てて解を導き出す能力だと思います。

これは理系の人の頭の使い方だなと思い
私から見ると非常に憧れを抱きます。

具体思考の強い人間にはこれが難しく
問題の一つ一つに対処しようとしてしまい
場当たり的な対処になりがちです。

こうやって説明すると
「具体思考ってなんだか損」という気がするのですけれども
具体思考というのは個々の特性をそのままにしておくことができる
「みんな違ってみんないい」の色鮮やかな世界だとも言えます。

何人かで同じ満月を眺めていたとして
ある人は平和を感じ
ある人は国家の行く末を憂え
ある人は「月のウサギってウサギ型の宇宙人なんじゃないかな」と考え
ある人はパンケーキみたいで美味しそうと思っていたりします。
そしてそこに唯一の答えはありません。

また抽象化というのは
乱用されてしまうと良くないということもあります。
私もよくやってしまうのですけれど
「中国人とは○○」「男とは○○」「女とは○○」というように
短絡的に共通点を見出してくくってしまうというものです。
これは「本当にそうか?」というのは全く確認しておらず
個々の存在を無視していると言えます。
脳が、考えることや知ることというのを
ショートカットしているサボっているということなので
真の意味の抽象思考ではないと言えるのですが
乱用の危険性はあるということです。

抽象思考と具体思考を
両方使いこなせるようになることが理想的かなと感じます。

『宇宙思考』を読んでいて特徴的だなと思うのが
天文物理学の内容を一旦抽象度を上げて
人文学的な方向性(人はどう生きるのか)ということに
着地させているところかなと思います。

動画を見ていても抽象化と具体化の間を
行ったり来たりして使い分けておられるから
非常に頭に入りやすいです。

宇宙の話を分かりやすくしてもらえるだけでも
勉強になってとてもありがたいのですけれども
そこから導き出された彼女が発信するメッセージに
非常に勇気づけられました。
宇宙好きな人に限らずいろんな人に薦めたい一冊だなと思います。

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