横歩回避される前提で事前準備をした話
19日ののりたまのリーグ戦に向けておこなった準備の話をする。大した研究量ではないので、今朝、記事のために付け足しの研究もした。
先後はランダムだったので先手後手両方の準備をしたが、記事では実際に引いた後手番のためにやった準備について書く。
人読み
相手はゆーげん。居飛車党で角換わりを好む印象があった。後手番では一手損角換わりの採用の多い印象だ。
彼は相掛かりや横歩取りは好んでは指さないとも感じていて、横歩取り模様の序盤では雁木や先手一手損角換わりで横歩を回避する可能性が高いと予想した。
それらは先手がやや妥協した序盤だと思うし、後手には不満がない気がした。
筆者は後手番の横歩取りがまったく指せないわけでもないので、万一横歩を回避してこなくても大丈夫。というわけで、後手番では2手目△3四歩~4手目△8四歩を採用することにした。
なお、楽しくなってしまい関係なさそうなところまで検討したのと、横歩回避の話に興味がある人も読むかもしれないという考えから、対局への準備から脱線した話もごちゃまぜで書いてしまうことにする。
5手目▲2五歩
具体的な手順の話を。
▲2五歩 △8五歩 ▲7八金 △8六歩
▲同歩 △同飛
▲2五歩~▲7八金は一番普通の指し方だ。そこで普通の手は追随する△3二金なのだが、こうなった時は△8六歩と指すつもりだった。
上の図から▲8七歩△8四飛と進めば相掛かりになりそうだ。これは一局の将棋だと思うが、角換わりの定跡形よりも戦いやすいのではないかと考えた。
▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △3二金
▲2四歩~▲同飛にはそこで金を上がる。
△8六歩~△3二金の手順前後はひねった手順だが、先に△3二金とするよりも角換わりになる可能性を減らしている意味である。▲7八金の時に△3二金だと▲2二角成とされる可能性があった。
上の図の△3二金まで進むと横歩取りか相掛かりの将棋がほぼ確定している。局面自体はこれからの将棋としか言えないが、やはり角換わりをやるよりいいと思った。
戻って、先手は▲7八金を上がると角交換が間に合わないので、一手早く▲2二角成とするのも考えられる。
▲2五歩 △8五歩 ▲2二角成 △同銀
▲8八銀 △3三銀 ▲7七銀 △6二銀
▲7八金 △7四歩
これも一局の将棋だ。手損で先後が入れ替わった勘定なので先手が損しているのは間違いないが、後手番になっただけなので小さな損で済んでいるとも言える。
相腰掛け銀を選んで後手に問題があるわけではないが、3二金を上がっていない形を生かして3二玉型に組むのも有力な工夫だと思う。
一例はこんな感じだろうか。先後を逆にすれば最近の棋譜中継でも見かける形だ。これも急戦調の将棋にできるなら相腰掛け銀で組み合うよりいいと思っていた。
先手が普通に▲2五歩を突いてきた場合は、このように横歩取りか相掛かり、角換わり早繰り銀の将棋を想定していた。
5手目▲6六歩
角道を止める横歩回避もある。
▲6六歩 △8五歩 ▲7七角 △6二銀
▲2五歩 △3三角 ▲7八金 △3二金
後手は飛車先を銀で受けるのも普通だ。そうすれば矢倉vs雁木の構図が予想されるが、比較的経験の少ない形なので採用を見送った。
最後の△3二金では、△7四歩や△4二玉で早繰り銀を目指すのも有力だった。後手雁木に対する早繰り銀はよく指す形なので、早繰り銀に不慣れということもない。(上手かどうかは別)
ただ、自信のない形があったので採用を断念した。
これ。(みらぶるさんがつぶやいていて知った)。
短い時間ながらソフトとにらめっこしてみたものの、これはやめとこうという結論になった。
後手は急戦にしないなら△3二金と上がり相雁木に進めるのが普通だろうか。
(棋譜省略)
この図を起点として分岐を考えていく。
たとえば、相腰掛け銀の同型になる将棋もある。
(棋譜省略)
先手の攻撃力が高い形ではないと思うので、これは後手が嫌うべき同型ではないのかなと思っていた。
戻って、先手が急戦を狙うのも考えられる。
▲6九玉 △9四歩 ▲9六歩 △7三桂
▲1六歩 △1四歩 ▲4六歩 △4一玉
▲7九玉 △6四歩 ▲3七銀
腰掛け銀にするのを遅らせて▲7九玉とするのが先手の工夫だと思われる。そして、後手が△6四歩を突いたのを見て▲3七銀と上がる。
△4二角~△6四角のさばきがなくなったところで角頭を攻めるという理屈だ(おそらく)。
△6三銀 ▲2六銀 △5四銀右 ▲3五歩
△4五歩
後手は△4五歩から角を使うことになりそうだ。
先手が先攻しているが、形勢はほぼ互角だと思われる。自力だと形勢がどうなっているかはよくわからない。
ただ、後手が勝った棋譜を並べたことがあったので、そのイメージでこれなら後手がいけるのではと思っていた。
戻って、先手は3筋で一歩持つ指し方もある。
後手が先に△7三桂と跳ねることになるので、先手にだけ袖飛車の権利がある。それを生かして同型を崩すというアイディアだ。
▲6九玉 △9四歩 ▲9六歩 △7三桂
▲1六歩 △1四歩 ▲4六歩 △4一玉
▲4七銀 △6四歩 ▲3八飛 △6三銀
▲3五歩 △同歩 ▲同飛 △3四歩
▲3九飛
下段飛車にするのは▲3七桂~▲2九飛と振り戻す形を見越した手。先手が一歩持っているため、組み上がれば同型よりも打開しやすいはずだ。
△5四銀右 ▲5六銀右 △3一玉 ▲3七桂
△3五歩 ▲4七金 △6五歩
後手は△3五歩~△6五歩と先手が悪形の瞬間に仕掛ける。これは後手ペースのようだ。
先手は形勢以上に実戦的な指しにくさがありそうだ。玉の位置は6八のほうがよく、それなら先手も戦えるようだ。
序盤で先手が▲6八玉を選んだ場合は、後手は仕掛けずに組み合うことになる。
一例はこんな感じ。先手に主張を作られているものの、後手もまずまずではないかと思う。これはマニアックな変化だと思うので相手が指してくることは少ないような気もする。
先手雁木にしてきた場合はこのように相雁木を想定していた。戦型が相雁木に決まった後は、同型、先手棒銀、先手袖飛車が考えられると思う。
5手目▲7八金
▲7八金は飛車先を保留した先手一手損角換わりをする狙い。上の▲2五歩を突く変化では後手の早繰り銀を例にあげたが、2六歩型のほうが早繰り銀にも強いと思う。
▲7八金 △8五歩 ▲2二角成 △同銀
▲8八銀 △6二銀 ▲7七銀 △6四歩
後手はやはり3二金保留を生かしての急戦を考えたい。早繰り銀は先手の工夫が生きそうなので、後手は今度は△6五桂からの急戦を狙う。
先手は腰掛け銀の他に、どこかで▲2五歩を突いて早繰り銀に切り替えるのも考えられる。
▲4八銀 △9四歩 ▲9六歩 △6三銀
後手の駒組みだが、△7四歩~△7三桂を急ぐのは得策ではないと思う。居玉で仕掛けを狙うのは、▲2五歩と△3三銀の交換が入っておらず銀が浮いているのが損になりそうだ。
たとえば、このような展開だ。
後手は好調に攻めており、手としては△9五歩という攻めがあるのだが、すぐに突くのは▲5五角が先手になってしまっていけない。しかし、ここで一手受けるのではつらい。
また、仕掛けないなら後手は△7三桂は後回しにしたいところだ。
桂を跳ねると、先手が早繰り銀にしてきた時に△5四銀~△4四歩で対抗しにくくなる意味があると思う。
上の図が一例だが、これはなんとも言えない局面だと思う。
後手番の指し方としてはありだと感じるけれど、一手得して実質先手番であったことを考えると消極的なのが気になりもする。
桂跳ねを保留した場合の一例はこんな感じ。このほうが積極的に指せているような気がする。とはいえ、気分が良いか悪いかくらいの差だとも思うが。好き嫌いによっても感じ方が変わるところかもしれない。
▲4六歩 △7四歩 ▲6八玉 △7三桂
▲4七銀 △5二金右 ▲3六歩 △4二玉
▲3七桂 △3二玉
後手はこの形に組み、△7五歩▲同歩(△9五歩▲同歩)△6五桂の仕掛けを狙う。
一例はこんな感じ。
形勢はほぼ互角らしい。筆者の自力では判断のつかないところだが。
後手としては、速い流れになってしまえば舟囲いが堅いのは心強いところ。飛車も比較的切りやすい。また、一方的に攻める展開にしやすいのも、好み次第ではあるもののセールスポイントになると思う。
一方、攻めが細くなりがちで先手も全力で受けに回る展開になるため、うまく攻めをつなげる必要がある。作戦の難易度は低くないと思う。
先手が飛車先保留の一手損角換わりにしてきた場合は、このように△6五桂ぴょんを中心に想定していた。
実際の将棋(棋譜)
リンク(将棋アイオー)
実際の将棋は5手目▲7八金から△6五桂ぴょんで仕掛ける展開になった。概ね想定通りだった。想定範囲に収まったので、横歩回避の対策はうまくできたと言えるんじゃないだろうか。
もっとも、その後の指し方がまずく負けにしてしまったのだが。
そんなわけで、脱線したりもしつつ横歩回避された時の序盤について書いた。なにかの参考になったらいいなと思う。
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