局後KENTO 1

最近は、対局後のソフト検討をしていておもしろいと思った局面についてはツイートしたりしている。
ただ、ツイッターで書くのに適した分量の範囲はあり、あまりにも長く複雑になるようならnoteなどにしておくべきだろうと思った。今回は終盤の検討だったのだが、長くなりそうなので記事を書くことにした。

居飛車対振り飛車の終盤戦

後手が△3七金と打って攻め合った局面が今回のテーマだ。
先手玉は左右から挟撃されている格好となっている。後手玉は囲いの中にいる。そして、囲いの金銀が竜と角で横から攻められている格好だ。

検討してわかったものを含め、寄せの速度や条件についてまとめていく。
この△3七金は詰めろではなく、次の△3八金が詰めろになる。先手玉は2手スキだ
先手はここで詰めろをかければ勝ちの条件だと言える。

先手は攻めるなら、まず5一の金を取る手が自然だ。角から行く手と竜から行く手がある。ただし、これは駒を渡す攻めである。

▲5一角成は詰めろ。

攻め合うと……?

ただし、△同銀の時に詰みはない。後手にも馬を取る余裕はある。そこで▲同竜は詰めろなので、先手の詰めろが続く形である。

詰めろ詰めろで迫る

後手玉は受けなしにも見えるが、手番は後手だ。角を渡したことで、先手玉に詰みが生じた。△4九角。

1手詰

上で詰めろをかければ勝ちの条件と書いたが、駒を渡すと自玉の条件が変わることがあるのだ。
「駒を渡さずに詰めろ」という言い回しはプロの対局中継の解説などでもよく聞くと思う。
先手が詰めろをかける時、角は渡せない駒だった。

次は竜から行く手を考える。▲5一竜も詰めろだ。

竜を切る

これも△同銀で解除できる。そして、▲同角成で詰めろが続く。

飛車を渡した場合はどうか?

今度は渡した駒が飛車なので条件が違う。これで先手玉が詰むかどうかだが、△6八飛と打ち込んでいけば詰むようだ。

以下詰み

(▲同金△同銀成▲同玉△7七金……以下の手順で詰む)
これも後手勝ち。先手が詰めろをかける時、飛車も渡せない駒だった。

条件を整理し直すと、先手玉・後手玉はともに2手スキ。ただし、先手が後手に飛車や角を渡すと、先手玉は1手スキ(詰めろ)になる。先手は駒を渡さずに詰めろをかければ勝ちである。

話が前後するが、先手玉が2手スキであることを確認するために、▲5二香と打つ手を考える。香のタダ捨ての手だが、取られても安い駒だという意味はある。
以下は、仮に△同金▲6一角△8二玉▲5二角成と進めば後手玉に詰めろがかかる。また、手順は省略するが、先手玉は香なら渡しても大丈夫だ。

これなら先手が勝ちそうだ

ただし、▲5二香自体は詰めろではない。△3八金と取った手は詰めろなので、先手が一手負けている。

後手一手勝ち

以下は、▲5一香成の時の変化で先手玉の詰み筋を確認する。

この手は詰めろだ。いわゆるキャンセル待ち

ここで△5七銀成と捨てるのが好手で、以下詰みとなる。(▲同桂△4八金▲6九玉△5七桂不成まで)。

好手

桂を跳ねて6九に逃げ道ができるが、8七の竜がストッパーになって詰みとなった。
先手は2手スキの手でまっすぐ攻め合ったが、一手負けをした。

途中の△3八金の局面では、▲同銀で詰めろの解除をはかる手もある。この手は▲4七玉の脱出も見ている。

自玉に手を戻す

ただし、ここでも△5七銀成が好手で先手玉は即詰みだ。▲3八銀は詰めろ解除にならなかった。

同じ詰み筋

というわけで、△5七銀成という好手があるので△3八金は詰めろになっていた。

先手は駒を渡さずに攻めようとしても、▲5二香では速度が足りなかった。
今度は受けに回る手を考えてみる。受けにくい格好だが、▲3七金△同銀成▲5九玉はどうだろうか。

駒を拾いながらの凌ぎ

これは手数を稼ぐ受けにはなっていないが、持ち駒を増やすことができている。

先手玉は受けなし

△4八金▲6八玉△4七成銀で先手玉に詰めろがかかった。元の局面は2手スキだったので、▲3七金からの手順は、むしろ後手の攻めを加速させたと言える。
この局面では、先手は後手玉を詰ませば勝ちという条件に変わっている。
整理すると、この手順は、金と銀を拾う代わりに後手の速度が1手速くなる手順だったと言える。
あとは後手玉に詰みがあるかどうかだが、金と銀を増やしても詰みはなく、△4七成銀の局面は後手勝ちである。(先手玉が1手スキに変わり、後手玉は2手スキのまま)

話が前後するが、先手が駒を渡す手順だと先手玉は1手スキ、後手玉が2手スキ。また、先手が駒を渡さない手順だと先手玉は2手スキ、後手玉は3手スキ―――という条件になっていた。
普通にやると後手が勝つ。先手は速度逆転をさせる手が必要だ。具体的には攻防手だ。

ようやく結論めいたところに入るが、▲8八香(または▲8九香)が先手の正解手だ。

この香は遠く8三を睨む

後手が攻め合うなら△3八金だ。これは詰めろだが、先手も竜を外すことができる。

これが詰めろ逃れになる

▲8七香と外した手は、詰めろ解除の手になっている。なぜなら、7八への利きがなくなっているからだ。後手が前述の筋で先手玉を詰ましにいった時に、6九から7八のルートで玉が抜ける。

8七にいた竜が消えている

△5七銀成▲同桂△4八金▲6九玉と進むと、△5七桂不成では詰まない格好だ。先手玉を左辺に逃がす展開は先手が勝ちそうだ。

懸命に寄せの網を絞る

ここで△7七金と縛る手は考えられる。これは詰めろ。

条件が変わっていた。以下詰み

しかし、後手玉は、駒を渡したことに加え、8七の香が盤上に現れたことによって、いきなり王手がかかる形になっていた。
▲8三香成△同玉▲8四歩△同玉▲8二飛と進むと、後手玉は即詰みである。変化はあるがすべて詰みだ。

▲8七香と外した局面は先手玉の詰めろが解除されており、また、詰めろを継続するのも難しいと言える。先手からは次に▲7五桂などの縦からの詰めろも生じており、ここは先手が勝ちになっていそうだ。

今度は△7六竜とかわす手を考えてみる。

金取り

この手は詰めろではない。そして、先手が▲8八香を通したことで、後手玉への縦からの攻めが生じている。

後手玉は受けても一手一手

▲9五桂が詰めろだ。そして、手順は省略するが、後手玉には適当な受けがない。
先手は▲8八香が通ったことで、駒を渡さずに詰めろの条件を満たせるようになったのだ。これは攻防手で速度が逆転する好例だと思う。

最後に△8八同竜と取る手を考える。

左辺を押さえていた竜を消す

先手は▲同金。先手は飛車を持った。
このことで条件が変わってきている。次に先手が▲5一角成とした時に、後手は△同銀で詰めろが解除できなくなっている。それを確認するために、一手パスに近い手を指した場合を見てみる。

先手玉は変わらず飛車や角を渡せない形

△9四歩は玉を広くして価値の高いパスの手だ。先手は詰めろをかければよいが、飛車や角を渡せない条件。

▲5一角成を取れば即詰み

ただし、▲5一角成△同銀で後手が角をもらう手には、▲3二飛△5二香▲6一角のような要領で、解説は省くが詰みがある。

まとめる。▲8八同金の局面は後手玉は2手スキだ。そして、後手が先手玉に2手スキ以下の条件で手を渡すと(詰めろをかけないと)、先手は駒を渡さずに後手玉に詰めろをかけることができ、先に攻められた後手が速度計算どおりに負けると言える。

そこで、今度は後手が先手玉に詰めろで迫る手順を考える。

後手は詰めろで迫りたい

△3八金は詰めろ。先手は▲同銀と取る。これで4七に逃げ道ができることは上にも書いた。

詰めろを解除

これは詰めろを解除する手になっている。後手が自陣に手を戻すと▲4七玉とされて、先手玉が寄らなくなってしまう。なので、詰めろを継続しようとする。

先手玉に食らいつく

△5七銀成▲同桂△4八金と、後手は先手玉を4七に逃さないように攻める。以下、▲6九玉に△5七桂成。これは詰めろだ。
しかし、後手が先手に駒を大量に渡したので、後手玉の状況が変わっていた。

放り込んで即詰み

▲6一銀といきなり王手をかけられて、解説は省略するが後手玉は即詰みだ。というわけで、△8八同竜と取るのも先手勝ちのようだ。
結局、後手も駒を渡しすぎずに詰めろをかければ勝ちの条件だったことになる。

検討の結果、▲8八香(または▲8九香)で先手が勝ちそうだということがわかった。
まとまりのない文章になったが、書くことで速度を整理したり、渡せる駒の条件を整理したりがしたかったのだ。その試みは、多少はうまくいったと思う(文章がごちゃごちゃしていることには目をつぶる)。

※タイトルに数字を振ったが、次のKENTO記事が書かれるかは未定である。

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