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Japanese ver.にも良い曲はある

K-POPを好きになると必ず出会う、Japanese ver.。K-POPを好きになって10年、いろんなところでJapanese ver.に対しての意見を見かけてきました。私自身、納得のいかないJapanese ver.にたくさん出会ってきました。それでも、真摯に日本語と向き合って作られているJapanese ver.も存在しています。近年、その傾向が増えてきました。日本人メンバーがいるグループが増えてきたこと、SNSなどの発達などで韓国の活動も追いやすくなり、付け焼き刃のJapanese ver.には需要がなくなってきているなどいろんな要因があるかと思います。

Japanese ver.はビジネスのため

そもそも日本デビューをはじめとする日本での活動は、海外アーティストとしてではなく日本のアーティストと同じ土俵にたって同じだけファンを獲得するためのもの、要するにビジネスが根底にあります。おそらく、歌詞を重視することが多いJ-POPで戦うためには日本人に歌詞を理解してもらう必要がある→じゃあ手っ取り早く流行った曲でJapanese ver.つくろうという考えで作られたJapanese ver.は数多くあるはずです。それゆえにJapanese ver.に否定的な声が多いです。(そもそも海外のアーティストとして好きなのだから、歌詞は聞いてない、日本の曲をうたう彼らは求めていないなどの理由で日本語はいらないという方、歌詞を理解したかったら韓国語を勉強すればいいだけ、という方ももちろんいるはず)

それでも良いJapanese ver.もある

しかし、そんな否定されがちなJapanese ver.ですが「意外といいじゃん!」というものも最近増えてきました。大学時代は日本文学を専攻し、日本語という言語が個人的に好きなため、音楽として楽しむことはもちろん、歌詞も楽しんでなんぼ!がわたし。そこで、そんなわたしからみた、日本語だからこそできた表現などがある、お気に入りJapanese ver.を2曲紹介します。

Nonstop(Japanese ver.) / OH MY GIRL

2020年にだされたこの曲。キャッチーなメロディに対してゴリゴリのラップが入っており、それを歌いこなすオマゴルの実力もわかる曲です。しかしそれを損なわずに、うまく耳馴染みよく、意訳されています。それだけでも素晴らしいのですが1番な注目ポイントは「キュンときた、大好き」。原曲のここにあたる歌詞は「살짝 설렜어 난」直訳すると「少しどきどきした、私は」となります。この「ときめいた瞬間」を日本語特有の擬音語のひとつ「キュンとした」に意訳したセンスに脱帽しました。「キュンとした、大好き」と擬音語を使うことで韓国語特有の跳ねるような発音のイメージを残しつつ、日本ならではのアプローチでこの曲の可愛らしさを表現しています。

Oh My!(Japanese ver.)/SEVENTEEN

続いて2曲目は、自主制作アイドルとしても知られているSEVENTEEN。彼らは日本語曲ももちろん自主制作です。(もちろん日本語詞の場合は共作がメイン)そんな彼らのだすJapanese ver.がわたしはとても好きです。その中でも素晴らしいのがこのOh My!(Japanese ver.)。正直、どこまでメインプロデューサーであるウジくんが関わっていてどれだけ日本語詞を担当してくれている方がやっているかはわからないのですが、このJapanese ver.を聴いたときびっくりしました。とくに素晴らしいのがタイトルでもある「어쩌나」。この言葉はサビで多用されており、それがこの曲のキャッチーさを現している部分でもあります。しかし日本語で直訳すると「どうしよう」。ただ「どうしよう」に置き換えただけでは、「어쩌나」の持つキャッチーさは失われてしまいます。そんな「어쩌나」という言葉を彼らは「どうしたらいいかな」「どうしようもなく」「どうしようもない『どうしよう』が」などニュアンスを変えて訳しています。日本語の、同じような意味でありながらニュアンスで使い分けている言葉を、歌詞の流れに合わせて取り入れることで単調にならず、聴いている人たちへそのときの「어쩌나」のニュアンスを伝えるとともに、この歌の恋に悩む様子の愛おしさを、歌っている雰囲気を損なわずに残しています。

SEVENTEENはタイトル曲は日本オリジナル曲、カップリングはJapanese ver.なことが多いです。おそらく、メッセージ性、日本語との相性、いろいろなことを考えて選曲しているのではないかな、と思っています。韓国でのタイトル曲でJapanese ver.があるのは実はこの一曲だけなことからも、それを実感しています。(他はユニット曲やメッセージ性の強い曲がJapanese ver.としてリリースされています)また逆に日本オリジナル曲をKorean ver.としても歌っているSEVENTEEN。その国の文化によって歌詞のニュアンスを変えているので比較しても面白いかもしれません(次のnoteのテーマにしたい)

Japanese ver.は悪なのか?

音楽の楽しみ方はひとそれぞれです。しかし、音楽を仕事にしているひとにとって、ビジネスは大切です。とくに事務所が大きく関わってくるアイドルはなおさら。それでも、上記で紹介したような、日本語を活かしたJapanese ver.に出会うと少しだけうれしくなります。日本語が母国語の人間として。言葉が好きな人間として。音楽が好きな人間として。だから、わたしはJapanese ver.を完全なる悪とはしたくないと思っています。(もちろんセンスのかけらもないJapanese ver.は許さない)日本で生まれ、日本で育ったわたしにとってやはり1番スッと入ってくる言語は日本語です。だからこそ好きなアーティストが歌っている歌詞がスッと入ってくる快感を本来は海外アーティストであるK-POPアイドルでもJapanese ver.として体感できる嬉しさがあります。こればっかりはどれだけ韓国語を勉強しても、残念ながらわたしには越えられない壁なのです。

だから、これからもJapanese ver.でお金を稼ごうと考える事務所がいるのなら、センスのあるJapanese ver.を生み出してくれることを願います。

最後に。日本オリジナル曲でもクオリティが高い曲をリリースしてくれるSEVENTEENのJAPAN 2ND MINI ALBAM「24H」が明日リリースされます!サブスクでは今日から配信されていますので、是非聴いてください。


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