第12章 ダモクレスの剣(ドラブラメインストーリーまとめ)その1

 スマートフォン向けMMORPGコード:ドラゴンブラッドメインストーリーのまとめです。

前回のあらすじ

 兄との交渉を切望していた稚女であったが、王将の介入により悪鬼としての人格が蘇ってしまう。兄弟は再び刃を向け合うこととなり、和解は絶望的となった。
 高天原から脱出したシーザー、ソ・シハン、《プレイヤー》の3名は、アンジェによって気象局へと招集される。復活寸前の神を殺すため、学院は最終兵器を準備していた。
 その名は《天罰》ーー

第12章 ダモクレスの剣

天罰計画始動

 ガットゥーゾ研究所が生み出した究極の宇宙兵器《天罰》。
 その正体は、タングステンやマンガンなどの金属で作られた約6メートルの金属棒でした。これを宇宙から重力で地上に落下させることで凄まじいエネルギーを生み出す、いわば人工の隕石です。

 報告によれば神は荒れ果てた山に囲まれたエリアにおり、人的被害を出さずに《天罰》を使うことができます。

「起動パスワードはEVAとかいう小娘に渡した。ガットゥーゾファミリーの最高機密だ。旧友にしてやれる最大の手助けだぞ」

ポンペーイウス

 輝夜姫は6章の折の爆発でシステムダウンしたため、妨害を解除されたEVAは東京のネットに接続できるようになっていました。アンジェの命令があれば、彼女は宇宙から鉄槌を下し神のいる区域を火の海にすることができます。

《天罰》の起動権はEVAに

 EVAが言うには、《天罰》は約90分で地球を一周する人工衛星の一種であり、神の頭上でこれを発動するためには、東京の真上を通過するタイミングを待たなければなりません。次に東京上空に到達するのは、約70分後。
 このタイミングを逃せば、次の発動までに90分かかります。チャンスを逃すわけにはいきません。

「よろしい、70分じゃ」
「あの井戸の正確な座標をくれ。座標を誤ると、罪なき者を巻き込んでしまうからな」

アンジェ

 オロチ八家の軍事機密である井戸の正確な位置を知るのは大族長のみ。稚生は高天原で負った大怪我の集中治療中らしいのですがーー

「必要なのは座標だけだ! まだ息の根があるなら、口を割らせろ!」
「思い上がりのあのクズが台無しにしおった。少しくらいは役に立ってもらわんとな!」

アンジェ

 その時、不意にスタジオの扉が開きました。現れたのは怪我で動けないはずの稚生。どうやら無理をおして駆けつけたようです。

憔悴した様子の稚生

「そう、確かに私は思い上がりの愚か者です。全てを台無しにしました」
「13号貯水井戸、コードネーム赤い井戸は、多摩川付近の山中にあります。1時間前、赤い井戸を守っていた忍者部隊との連絡が絶え、猛鬼衆に占拠されました。そこに神がいるのは疑いようもありません」

源稚生

正義と大義

 稚生と話がしたいというアンジェ。
 稚生もカッセル学院出身で、かつてはアンジェから奨学金も受け取っていた、優秀な生徒でした。

久しぶりの恩師との再会

「校長の奨学金を頂けたのは、生徒としての誉です。面会を断っていたのは、大族長としての尊厳からです」
「私は良い生徒ではありません。神髄を学べませんでした。大族長にも見合いません。私を天照命と信じた者達は、死をも厭いません。しかし、新しい未来をもたらすどころか、一族を死の道へと引きずり込んでしまいました」

源稚生

「あれから長らく経つのに、まだ過去に追われているのか、稚生」

アンジェ

 かつて稚生はアンジェに「人は正義のためにどれほどの犠牲を払えるのか」と尋ねたことがありました。その時彼は稚女の名こそ出しませんでしたが、アンジェは彼が弟のことで悩んでいることを見抜いていました。

 アンジェはルース・ベネディクト『菊と刀』の一節を引用し「大義のためであれば、裏切りも殺戮も欺くことも厭わない。大義を持つ者であれば、何人たりとも否定できない」「ベネディクトが言う大義こそが、君が話していた正義ではないのか」と問います。

「残念だが、君の恩師としてその大義を認めることはできん。この世に正義を超越した正義などあってはならないのだ」
「復讐こそが正義という者もおれば、守る事こそが正義という者もおる」

アンジェ
正義と大義の違いを説くアンジェ

「君が弟の幸せを最も望むのならば、それを守ることが君の正義だ。彼のためなら、世界を敵に回すことも厭わんだろう」
「だが君は正義のために対価を払った。辛いだろう。君の従っている正義など、己が真に欲しているものではないのだからな。それは誰かに植え付けられた『大義』であって、君自身の思いではない」

アンジェ

「校長にとっては、復讐こそが正義なのでしょう?」

源稚生

「さよう。復讐のためにこの命が尽きたとしても、私は構わない。ただ、この刃を黒王の心臓に突き立てられなかったことを残念に思うだけだ」

アンジェ

 1900年、夏の哀働事件。
 カッセル荘園のシークレット・ギルドで蘇った第一世代竜族、李霧月(嵬名霧月)が、当時の獅子心会メンバーを壊滅させました。その唯一の生き残りとなったアンジェは、これを機に竜族殲滅に人生を賭けるようになったのでした。

「普通の人の人生に四季があるとしたら、私の人生には冬と夏しかない」

アンジェ
辛い過去を振り返るアンジェ

「マネック・カッセルと出会うまで、この世に大切な者などおらず、私は孤独だった。全てを憎み、己の力で貧しさと孤独から逃れることだけを考えていた私は、寒い冬を過ごしていた」
「だが、獅子心会が私に夏をもたらしてくれた。入会してからの数年間、私の生活は光と幸せに満ち溢れていた」
「だが、あの初夏の夜、竜族に全てを奪われてしまった。私だけが生き残り、栄光、夢と共に全ての友を失った。そして私の人生は、また凍てつく冬に舞い戻り、そこから、抜け出すことはなかった」

アンジェ
失った者たちの無念を背負い、復讐を誓った

「これが私の人生だ。黙って墓になど入れるものか。私は、叫びながら死ぬしかない」
「誰もが己のために生きている。絶対的な正義など、己の憎しみと渇きを満たすための言い訳でしかない。本当にそんなものを信じているとしたら、君はまだまだ子どもだな」

アンジェ

 校長の過去から生きた教えを得た稚生。その顔にはいつもの強さが戻ったようです。
 《プレイヤー》たちに別れを告げ、彼はしっかりとした足取りで帰って行きました。

再び《プレイヤー》らを「友人」と呼んでくれた稚生

(その2に続きます)