第8章 夏夜の夢の終わり(ドラブラメインストーリーまとめ)その4

 スマートフォン向けMMORPGコード:ドラゴンブラッドメインストーリーのまとめです。

この世界に生まれた子供

ソ・シハンはまっすぐに夏弥を見ている

 ずっと人間のことを学んでいた夏弥。

「あんたたちは竜のことをまったくわかってないわよ。竜だって人間と同じ、最初はこの世界に生まれてきた子供だ」

夏弥

「神……なのに?」

ソ・シハン

「神様にだって初めて目を開いて世界を見たばかりの頃があった。その時は何もわからない子供だろ?」

夏弥

「君も学習が必要なんだね。それは、人に化ける方法か?」

ソ・シハン

「そうよ、人が笑うところを観察し、なぜ笑うのか考える必要があるわ。人が悲しむところも観察する必要があるの。そうしないと悲しんでみせることができないんだ」
「わざと男子と親しくなることだってあるわ。あたしへの欲望、或いはあんたたちが口にしている『愛』を観察するために」

夏弥
彼女の仕草や表情は、観察と模倣の成果だった

「こういった物を少しずつ集めて、夏弥という、今までこの世界に存在したことのない人間を作り出すことができたんだ」

夏弥

 こうして作り上げた「夏弥」としての人格は、彼女を人間の世界で生きやすくしてくれました。「本当はもうちょっと身を隠すべきだった。そうすれば兄を犠牲にする必要も……」夏弥の顔に哀しみが浮かびます。しかし彼女たちにはもう時間がなかったのです。

 遊園地での事故も夏弥の仕業でした。混血種で最強の人間がどの程度か知るためでした。うまく殺せればラッキーだし、一緒に生き延びられたら、もっと信頼を得られるからと。
 あの時ソ・シハンを助けたのは、彼が血統の純度を高める能力を発揮したからです。ソ・シハンがその能力で周囲の関心を集めれば、夏弥はその陰により深く隠れることができます。彼に近づくことで機密情報にもアクセスしやすくなるというメリットもあります。

 夏弥はふと笑い出しました。

「ねぇ!あたしがあんたを助けたのは『愛』なんかのためだったなんて思ってないよね?」

夏弥
だって、全ては仕組まれたことなんだから

夢の終わり

「なんだか、禁断のように聞こえるな。あり得ない」

ソ・シハン

「そうね。あり得ないわ」
「……『同情』よ!」

夏弥

 夏弥は先程「友人のいない者同士、あたしたちはお互いのことを一番知っているのかもしれない」と言いました。孤独に生きてきたソ・シハンと、人混みの中で一人、誰かを観察し続けてきた夏弥。彼らは「血の哀しみ」を知る者同士であり、同じ寂しさを共有できる唯一の存在だったのかもしれません。

 「聞きたいことは全部聞いた?」と微笑む夏弥。最期の時が近づいていました。

「最期の質問だ……君は今、本当に夏弥か?」

ソ・シハン

「そうよ。あたしが夏弥よ。だから何も考えなくていい。さっきのは悪夢だけだ。夢の中で起きた恐ろしい事は、全部、夢なんだよ」
「あたしが、ずっと傍にいたじゃないか。前に10日も寝込んでいたときと同じようにね……」

夏弥

 ソ・シハンはゆっくりと両腕を広げ、夏弥を抱きしめました。

最後の抱擁を交わす

そして……


折り畳みナイフが夏弥を貫く

 ソ・シハンはアンジェから預かっていた折り畳みナイフで、夏弥の身体を突き刺しました。獅子心会初代会長、マネック・カッセルの長刀の破片から作られたというナイフは、竜類にとっては猛毒の武器でした。

夏弥をフェンリルのもとに横たえるソ・シハン

「さすがは竜に最も近い人間だ。よくやったわ」

イエメンジャド

「いや、夏弥じゃない、イエメンジャドだね」

ソ・シハン

「そうよ、あたしがイエメンジャド、竜王イエメンジャドよ!」

イエメンジャド

 彼女は竜としての尊厳を保ち、昂然と叫びましたが、その死はもはや避けられないところまで迫っていました。彼女は鍵を吐き出し、ソ・シハンに投げました。

鍵を吐き出すイエメンジャド

「まるであんたの子を食べたみたいな顔だな……夏弥を探すのならそこへ行くが良い。彼女のすべてをそこにおいてきた」

イエメンジャド
ああ、夏の夢が終わる

 「さようなら……」夏弥はその場に倒れ、息を引き取りました。


昔話を語り終えたロ・メイヒ

「先輩がブラッドブーストした時は、正真正銘の竜みたいなんだ。見た目も、行動も」
「そうでなきゃ、僕達はきっとあの地下鉄のニーベルンゲンで死んでたと思う」

ロ・メイヒ

 ロ・メイヒは、夏弥がソ・シハンの想い人だったのではないかと推測しています。

「先輩は、今でも後悔してるのかな……あの子は先輩の好きな女の子だったから……」
「……まさか先輩の心の中で夏弥がまだ生きてる?」
「先輩は君焔を使うときファイヤートルネードを使えるようになった。夏弥と一緒に風王の瞳を使ったみたいに」
「僕は時々先輩のことが羨ましいんだよな。彼らは両思いだね」

ロ・メイヒ

フィンゲルとの再会

 ロ・メイヒと《プレイヤー》は、シーザー達を手伝うために高天原へとやってきました。するとエレベーターホールに見覚えのある人物がいます。

ひどくやつれた様子の男がいる……

 ぼろぼろにやつれたその男性は、カッセルの落ちこぼれ先輩ことフィンゲルでした。
 日本には研修に来たというフィンゲル。しかし、《プレイヤー》達がオロチ八家と対立してしまったせいで、EVAとの通信が妨害され、彼は学院と連絡がとれなくなってしまいました。日本語もわからず誰とも話せないので、ゴミ箱を漁ってどうにか今日まで食い繋いできたのです。

 ひとまず食べ物をあげて落ち着かせましょう。

必死に食べ物を要求するフィンゲル

 シーザーが、日本支部が学院を裏切ったことを告げると、フィンゲルは「とうに分かってたぞ」と得意げな顔をします。彼の来日は研修だけが目的ではありませんでした。彼はオロチ八家の隅々に超小型カメラと盗聴器を仕掛けていたのです。すごいぞ! 彼はどんな有益な情報をもたらしてくれるんだろう!

「各当主のゴシップとプライバシーを把握したんだ。見てみたいか?」

フィンゲル
……ダメだこりゃ!

 ちなみにフィンゲルにシーザー小隊の居場所を教えたのは風間瑠璃でした。噂をすれば影あり。カウンターの奥から風間瑠璃も姿を表します。

風間瑠璃を見て驚くロ・メイヒ

 彼がここにきた理由は、2つのことを伝えるためです。一つ目は、橘政宗がオロチ八家内部で堕武者を養殖し、純血の竜に進化する薬を研究しているということ。
 もう一つは、3時間前に王将が橘政宗に連絡を取ったこと。彼が持参したボイスメモには、驚くべき内容が記録されていました。

「やあ、親愛なるボンダレフ少佐。久しいな。北極圏から21年前の旧友が電話をしてやっているぞ。何か、話したらどうだ。友人よ。10万年の歴史が詰まったウォッカを共に飲んだ仲じゃないか」

王将

「ヘルツォーク博士、まさか……ぬしか……生きていたのか」

橘政宗
ヘルツォークとボンダレフの再会

 なんと、王将の正体はブラックスワン港孤児院の院長、ヘルツォーク博士だったのです。それにしても、猛鬼衆とオロチ八家は敵対関係にあるはずですが……

「話がしたいのだが、会えるかな? 白王の遺産の分配について話す必要がある。知っての通り、私を完全に進化させられるのは、神の血以外にない」

王将

 対立する組織のリーダー、橘政宗と王将が密会する。その場所を、風間瑠璃はこう言いました。

「天も地もない場所」

(第9章に続きます)

余談

 イエメンジャドが吐き出した鍵がどんなものかは、仲間–夏弥の所持品一覧で確認することができます。

ちなみにこれはうちの花嫁夏弥の所持品
ブーケだけがなかなか出ない!

 この鍵が何なのか、原作で確認したところ、夏弥の住んでいる部屋の鍵のようです。
 高層ビルの後ろに隠れた古い団地、赤煉瓦の古い建物の201号室が彼女の家です。イエメンジャドを葬ったこの年の冬、ソ・シハンは一人でこの場所を訪れています。

 部屋には床から天井までの大きな窓があり、わずかな家具と、洋服や下着の入ったクローゼットがあるばかりでした。外は人々の生活音や子供たちの声で騒がしい。彼女はここで人間の声を聞き、人間のことを学んでいました。

 彼女の部屋で横になって目を閉じるソ・シハンを、夕暮れの闇が包んでいく描写が大変美しかったです。