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〝シンプル〟に潜む力を知る。

文・撮影/長尾謙一 

クリスマス島の塩(素材のちから第36号より)
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その土地の旬の素材を〝シンプル〟に生かすのがイタリア料理

ブイヨンなどを用いず、水とトマトだけで煮込んだ魚介のスープには、思わぬほどの深い旨みがある。雑味のない香りと旨みとコクを持つ、鮮度のいい素材だけを見極めて使う。これこそがイタリア料理が持っている〝シンプル〟の魅力だ。

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オーナーシェフ 日髙 良実 さん

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アクアパッツァ 東京都港区南青山
「アクアパッツア」は、まもなく30年を迎える。1990年に西麻布でスタートし、広尾、そして2018年4月に南青山へ。1986年、単身イタリアへ渡り、その土地の旬の素材をシンプルに生かした地方料理に魅せられ帰国。日本ならではの旬の素材に向かい合い、シンプルな調理で料理を提供する新しいイタリア料理の流れを日本につくった。1957年、兵庫県生まれ。

イタリア料理を見つけるための旅に出た

〝シンプルに素材を生かすのがイタリア料理〟とよく言われるが、果たしていつ、誰がそう言いはじめたのだろうか。

随分昔の話だが、そもそも日本のイタリア料理はトマトケチャップにタバスコというような、いかにもアメリカンなテイストからはじまっているが、それはこんな理由からだったと聞く。

第二次世界大戦でイタリアと日本は同盟国だった。そのため連合国側に日本よりも先にイタリアが降伏した時に、神戸に停泊中のイタリアの軍艦にコックが4人いたそうだ。この4人がそのまま日本に残り駐留米軍の施設中でアメリカ人好みのイタリア料理をつくった。これが日本に広まっていったのだ。

その後しばらく経ってから、イタリア旅行を楽しむ人が増えるにつけ、日本に本場イタリアの料理が紹介されるようになったが、ミラノやローマなど大都市に観光客が行くような店にあるメニューこそがイタリア料理と言われていた。

さて、今回の「クリスマス島の塩」ユーザーのご紹介は、アクアパッツァの日髙シェフを訪ねた。日髙シェフは1986年から1989年までの3年間イタリアで修業している。最初は北イタリアの2つ星、3つ星店で学ぶが、ほとんどの料理の方向性がフランスに向いていることに疑問を持ち、地方料理を学ぶためイタリア中を周った。

そこにはイタリアのその場所に行かないと出会えない味、そしてイタリア料理と大枠に思っていたものとまったく違う料理があったそうだ。

その土地の歴史と気候風土に根付いている料理、それがとてもおもしろく、厨房の中で見るフランス料理とは違う〝その土地の旬の素材をシンプルに生かした料理〟に、これこそイタリア料理だと日髙シェフは確信した。

そして、南イタリアで出会ったのが日髙シェフの料理の原点となった〝アクアパッツァ〟だった。帰国後のシェフのご活躍は皆さんもご存じだろう。

〝シンプル〟な料理は単純な素材の組み合わせからは生まれない。まず、その素材に潜む力をよく知ることが必要だ。その力を生かすために無駄を省き、おいしさへの最短距離を目指す。きっとそれが〝シンプル〟の意味に違いない。

アクアパッツァを〝シンプル〟に仕上げる

ご用意いただいた料理は〝金目鯛のアクアパッツァ風〟だ。海水で魚を煮る料理のため本来は魚に塩はしないらしいが、東京ではそうはいかない。「クリスマス島の塩」を魚にふって少し時間を置く。身を締めて塩味を中に染み込ませ、水気を拭いてフライパンで焼き、ブイヨンではなく水を加えて煮ていく。

金目鯛のアクアパッツァ風

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素直な旨みの凝縮感に驚かされる
アクアパッツァのスープをひとくち口にすれば、その素直な旨みの凝縮感に驚かされる。雑味のないすっきりとした旨みが濃いのだ。単純な素材の組み合わせに見えるが、魚介の見極めや塩の当て方に熟練の感覚が必要なのだろう。

途中からアサリと自家製のセミドライトマトも加えてしっかり火を通す。ほどよく煮詰まったところに仕上げにエクストラバージンオリーブオイルをたっぷり入れ、パセリのみじん切りを加える。

塩味は魚とアサリから出る塩分と最初に当てた塩だけ。あとからは足さない。だから最初の塩分が大事だ。「クリスマス島の塩」が旨みをよく出して濃厚な風味に仕上げる。まさに〝シンプル〟だ。

ところで日髙シェフと「クリスマス島の塩」の出会いは9年前、広尾のジェラテリア アクアパッツァで「クリスマス島の塩」を使ったジェラートを販売したことと、アクアヴィーノにもテーブルソルトとして置いたことからはじまったそうだ。

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「クリスマス島の塩」は〝自然塩〟

次は〝アクアパッツァ〟のランチで提供している〝自然栽培野菜の蒸し煮〟だ。茹でると旨みが全部出てしまうので蒸し煮にしてある。

自然栽培野菜の蒸し煮

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「体が喜びます。食べてみてください。」とシェフから勧められた。香りも味も生き生きしていて、とても自然な感じがする。「クリスマス島の塩」をミルで挽いて塩味はお客様が自分で調整する。

「オリーブオイルはいらないんじゃないかな。僕はかけない方がいいと思うんだけど、そう思わない? 塩がおいしいよね。」とシェフはおっしゃるが、同感だ。野菜が自然栽培なら「クリスマス島の塩」も自然塩だ。サンゴ礁でできた島の海水が長い時間をかけて風と光で固まったものだ。自然栽培野菜と相性のよさを感じるのも当然だ。

もちろん塩とオリーブオイルをかければおいしいが、この野菜にはオリーブオイルはいらないと思わせるパワーがある。野菜のおいしい表情をこの塩が引き立てている。

この塩はビリビリッと辛くない丸く甘い旨みを持っている

最後にトマトソースのパスタをいただいた。高糖度のフルーツトマトを半分に切ったものを自店でつくる有機トマトソースに入れて軽く火を通してしんなりとさせ、茹で上げたパスタにかけてある。

トマト好きのスパゲッティ

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トマトの上に「クリスマス島の塩」が見えるのは、トマト好きのためのトッピングだそうだ。「トマト好きにとって生のトマトに塩がのっているのはたまらないんじゃないか、トマトの酸味や甘みが塩味と重なっていくのを楽しみたいんじゃないかな。」というのがシェフの想像らしい。

「クリスマス島の塩」によってトマトの甘みや味の輪郭もグッと強調されている。この塩はビリビリッと辛くない。丸く甘い旨みを持っている。だから直接ふってもピリッとしたような嫌な塩味を感じないからトマトがおいしいのだ。

日髙シェフのおいしい料理をご馳走になりながら、〝その土地の旬の素材をシンプルに生かすのがイタリア料理〟という言葉をふと思い出した。


お問い合わせ:クリスマス・アイランド21株式会社

(2019年12月27日発行「素材のちから」第36号掲載記事)

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