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【感想】「画聖」雪舟伝説ー京都国立博物館ー

京都国立博物館で行われている雪舟伝説にいってきた。
前情報では、あくまで「雪舟展ではない」らしいとのことだけ仕入れ、いざ。

まだまだ美術の歴史に疎いこともあり、歴史の重厚さなど感じ切れないところはあったと思うが、
それでも目の前で作品を観たときに思うことはそれなりにあった。

まずこの展覧会自体は、「いかに雪舟がすごいか」について示すものであり、3Fの最初のスペースで雪舟の作品を網羅することは終えていた。
そして、個人的にはそれで十分すぎるほど十分だった。
「息を呑む」という表現を最初に思いついた人がいれば、ぜひハイタッチしたい。

3F以降の展示は、狩野派を中心にそこから派生したものや、模写がメインだった。(尾形光琳や葛飾北斎なども出てきたことも雪舟が優れた独自性の持ち主であることを後押しをした。)
技術に関しては雪舟より優れている作品もあったように思う。例えば曾我蕭白(そが しょうはく)の富士三保図屏風なんかは雪舟を踏襲しながらもその個性を爆発させていた。
個人的にも大好きな横尾忠則も彼を敬愛しているとのこと。

しかし後世の作品を観れば観るほど、最初のスペースで観た雪舟の作品の荘厳さを身に染みて感じるのだ。
言葉にするのが非常に難しい。。
例えるならUKロックについて述べようとすればするほどビートルズが再評価されていくような、そんな感覚であり、
しかしその作品自体の存在感、厳格さも衰えていない。
まさに息を呑んだ。

そんな作品について2つほど触れてみたいと思う。
まずは慧可断臂図(えかだんぴず)。

慧可断臂図〈国宝〉(Wikipediaより)

あまり使いたくない表現だが、ヤバすぎた、、。
5分以上動けなかったが、それほどに鑑賞する箇所が多い。

中国禅の始祖、達磨に慧可(えか)が弟子にしてほしいがために左腕を切り落として、、(割愛)のシーンを描いているらしい。

まず目につくのは、洞窟の描写。雪舟独特のゴツゴツとしたタッチで表現されている点だ。
視線誘導的には手前の岩から奥にかけて観ていくことになるだろう。
ただ、洞窟の奥も細かい影などかなり鮮明に描き込まれている。
丸い箇所もあって、その奥はいくつも重なりがあるように思え、突然の奥行きの広がりにやや困惑した。

もはや風景画かな・・?
と思って全体を見渡すと二人が座っている。
え、達磨(右の人)の衣服の描写がシンプル過ぎないか??

ここでさらにグッと引き込まれる。
そうだ、この二人のやり取りが描かれているんだった。
そう思い直し、二人に注目しなおす。

衣服とは相反して、二人の顔の描きこまれ方は繊細だ。
確かに達磨は無視していて慧可は真剣に頼み込んでいる感じだななどと思っていると、
慧可の持っているものが自分の左手だと気づく。
少しぎょっとしたが、二人の表情やシンプルな描写がまた不思議な空気感なのだ。もっと痛がれよ、、とか。いや、でもすごいな、、とか。

そんなことを感じつつ、前のご婦人との距離感に気付かず一瞥をしながら最後に全体を見直す。

何層にも重なる洞窟がより一層、二人の緊張感を作り上げていることがわかる。
ふつうもっと衣服描き込みたくなるよな、、。
あぁ、この人は奥行きを描く天才がゆえに、二次元的な表現をマッチさせることもできるのか。
でもこれって現代の漫画的表現に近いな、、。

みたいなことを考えながら
雪舟の引き算の美学を全身に浴びつつ次の作品に移動した。

紹介したい作品のもう一つはこちら。
秋冬山水図(しゅうとうさんすいず)。

秋冬山水図〈国宝〉(京都国立博物館 HPより)

形容が難しいほど「広い」絵だった。
心臓がどきどきして若干息苦しくなってしまい、絵のすばらしさを身体的に痛感した。

個人的には特に右の秋の絵が衝撃的で、
例えるなら最近AIの動画でずっとクローズアップし続けるものが出てきて、「すごい、全然目が離せない、、!」みたいな体験をしたものだが、感覚はそれに近く、
最初右下の崖や木から始まり、ジグザグに視線が誘導されていき、急に視界が開け、パッと明るくなる。
そこには霧がかったような山が描かれ、
自然と奥行きを感じさせられるのだが、あたかもずっと奥に続いていくような、そんなイメージを体感させられるのだ。

本当に驚いた。
ジュマンジの床に入っていくお父さんみたいに、絵の中に吸い込まれて、描かれていない山々を見ることができたのだ。


https://www.iowanazkids.org/fourstars/jumanji.html

この例えしか出なかったのは許してほしい(いいよ)。

ちなみに手前の描き込みも本当に細かく、
近寄れば近寄るほど繊細な筆致に驚かされる。

全体として伝えたいのは、奥行きの表現がすごすぎて入り込んだような気がしてしまうということで、さらにそれが水墨画で行われているということ。

以上、雪舟の2作品の感想となったが、
いやー、かっこよすぎる、、。
ぜひ生で観てほしい。


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